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日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り

日本酒類販売(東京都/倉本隆社長)の2024年3月期決算を発表した。連結売上高5840億400万円(対前期比6.0%増)、経常利益55億6600万円(同46.7%増)、経常利益率0.95%(同0.26pt増)、(親会社株主に帰属する)当期純利益37億3800万円(同50.7%増)となった。単体では、売上高5539億3400万円(同5.8%増)、経常利益49億1800万円(同43.4%増)、経常利益0.89%(同0.23pt増)、当期純利益31億7000万円(同28.1%増)と連結単体ともに増収増益で着地した。以下では、同社倉本社長の発言を抄録する(文責・千田直哉)

日本酒類販売の倉本隆社長

2023年の商品別売上(単体)

 2023年度の経済は円安や地政学的リスクの長期化、原材料価格の高止まりなどの影響を受けつつも新型コロナウィルスの感染症5類移行に伴う社会経済活動の正常化により、個人消費の回復やインバウンド需要の増加など緩やかな回復基調がみられた。

 酒類食品流通業界においては、都市部を中心とした業務用市場の回復や各地におけるイベントや催事の再開もあったものの、その一方ではコロナ禍における生活様式の多様化、飲酒スタイルの変容、物価上昇による節約志向の高まりがみられた。

 また、ビール系飲料、醸造酒類の酒税法改正やメーカー各社の値上げによる価格改定、また物流2024年問題への的確な対応が求められる一年だった。

 単体の商品別売上は下記の通りだ。

和酒

洋酒

ビール系

食品

 和酒については焼酎の甲類乙類の前年に実施された価格改定の駆け込み需要の反動とサツマイモの基腐(もとぐされ)病による出荷調整が影響し、前年未達となった。

 洋酒は国産、輸入ともに値上げによる影響が懸念されたが、値上げ後もとくに国産洋酒の人気が後押しし好調に推移した。また輸入洋酒においても業務用需要は回復傾向にあり、国産ウイスキーの品薄感が続く市場の影響で輸入ウイスキー、各銘柄が好調に推移し、洋酒全体で対前期比8.8%増となった。

 ビール系については、業務用需要の回復と価格改定による単価上昇もあり、上期は好調に推移した。10月の酒税改正による減税になってからは、新ジャンルや発泡酒からビールへの消費トレンドがシフトしてきた。ビールの新商品の発売も続き、ビールは通期で好調に推移し、対前期比2ケタ増となった。

 食品においては、飲料水で大きな売上シェアを持つコンビニエンスストアとネット通販の新規帳合、各企業との取り組みの伸長、代替を含む業務用の大幅回復が大きく寄与した。

 また加工食品ではネット通販と各メーカーとの取り組みで売上が拡大。業務用代替、外食の回復により対前期比9.6%増となった。

2023年のチャネル別売上(単体)

VTT Studio/istock

 次にチャネル別の売上について一覧でまとめた。

組織小売業

 業態別では、コロナ5類移行にともない、外食や業務用酒販店、コンビニ、また当社が注力している業務用代配の新規受託による売上増、高級洋酒の需要増もあり、業務用業態では大幅な増収となった。

 また、外食の売上が対前期比25%増212300万円の増収となった。

 家庭用では本格的な人流回復に加え、価格上昇による客単価の向上により、回復拡大が見られ増収。また海外からのインバウンド消費の回復や代替物流開始により、ドラッグストア部門では11.2%増の増収となった。

 ネット通販業態においては酒類、食品、飲料共に大手メーカーを中心に販促、広告活動の投入強化が続いており、伸びは鈍化したものの売上規模は引き続き伸長している。対前期比で8.6%増、32600万円の増収となった。