日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
昨今、「服の生地がペラペラになってきた」という声をよく聞く。多くの人は、アパレル側のコスト削減の結果とみる向きが多いが、実はそれほど単純な話ではない。社会、経済、業界慣習、そしてトレンドが複雑に絡み合った結果なのである。どういうことか?
女性の社会進出と服の「軽量化」の関係性
1kg=1000円の糸があったとする。ここでニットの目付(めつけ:重さのこと)が300グラム(肉厚で重いニット)だったものが200グラムになると、素材のコストは300円程度から200円程度に落とすことができる。原価で34%のコストダウンの実現である。このことから「昨今の原料高を吸収するために目付を軽くしているのだ」と言う向きがあり、それは正しいことではあるが、実はそれはいくつもある要素の1つに過ぎない。
ファッション衣料の原料が軽くなったのは、「トレンド」だからである。コストダウンは確かにそうなのだが、あくまでも、トレンドの結果として起きているだけだ。ニットであればスケスケの、布帛やジャージであればヘソ出し、肩だしルックなどが流行りだした。これにはいろいろな理由があると思われるが、まず第1に「女性の社会進出による開放感の醸成」、次に「地球温暖化による気温の上昇」に伴い軽くて薄い生地が好まれるといった要因がある。
第1の社会進出については説明が必要だ。ヘソ出しや肩出しルックが流行った時、某男性評論家は「セクシーカジュアル」と名付け、女性が男性の目を引くためにセクシーな着こなしをしていると説いていたが、これは完全に間違った理屈である。
実際、私は、その「セクシーカジュアル」ブランドを生み出したクリエイターに話を聞いたことがあるが、彼は「アメリカンカジュアル」と言っていた。つまり、クリエイターからしてみれば、原料の使用量が少なく肌の露出が増えている服は実は「アメカジ」なのである。私もはじめは理解が追い付かず、驚いたのだが、話を聞いていくうちに理解が深まってきた。
どういうことかわかるだろうか?
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