本多塾塾長が語る 流通業界 時事放談 第2回「足し算だけでなく、引き算の考え方が求められる時代」
コンビニエンスストアの商品開発に深く携わってきた本多利範氏が、チェーンストア躍進のヒントを探る新連載。第2回はコンビニエンスストアが模索する新しいフランチャイズ方式の在り方について解説する。
イノベーションを生み出せないコンビニ
2020年を迎えました。今年は夏に東京オリンピック・パラリンピックを控えており、キャッシュレスやグローバリゼーションへの対応など社会構造が急速に変化していくことが予想されます。
さて、19年を振り返ると、恵方巻の廃棄問題に始まり、残業代未払いや人手不足、フランチャイズ契約の問題など、コンビニエンスストアにとってはマイナスのニュースが多かった印象です。前回の連載では、日本のコンビニエンスストアは、足し算で成長してきた業態であると説明しました。コンビニエンスストアは、商品開発や売場づくり、物流、管理システムなど、新しいものをどんどんと生み出し、イノベーションによって市場を牽引してきました。生活者もコンビニエンスストアが次々と打ち出す商品やサービスに魅力を感じていましたし、加盟店のオーナーの利益も右肩上がりで伸長することで、コンビニエンスストア本部はエクセレント企業としてのステータスを保っていたのです。
しかし、全国のコンビニエンスストアが6万店弱、セブンイレブンだけでも2万店を超す時代に突入し、ビジネスの環境は大きく変化しました。これまでドミナントを形成することで、生活者の利便性向上に努めてきたわけですが、近年では単なる競合対策としての出店も目につきます。店舗数は増えたものの、宅配便や公共料金の支払い、チケットサービス、カウンターでのコーヒーやホットスナック販売など、煩雑な業務が増えていき、24時間営業ということも相まってコンビニエンスストア業態は深刻な人手不足に悩んでいます。
24時間営業や人手不足に関する問題が、最初にクローズアップされたのは外食チェーンです。外食業界は、原材料の高騰や消費税増税、軽減税率の影響などもあり、小売業界以上に難しいかじ取りを迫られています。しかし、セントラルキッチンでの加工を積極的に進めたり、原料にこだわった付加価値型の商品を提供したり、ひとり用のテーブルを導入することで回転率を高めたりすることで粗利率を上げた企業については、いずれも成功を収めているのです。