誰も語らなかったZARA圧勝の秘密1 日本企業がZARAに勝てない理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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誰も語らなかった世界のアパレルの王者ZARAが圧勝している秘密を全3回に渡って解説していきたい。ZARAとその他のアパレルの関係性を例えるなら、株式投資の世界における、プロと素人ぐらいの絶望的な差がある。今回はまずその絶望的な差のなかで“素人”がZARAに勝つための方法を提示することを通して、改めてZARAのビジネスモデルについて迫ってみよう。

Photo by Terroa
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投資の世界でプロには勝てない
アマチュアなりの勝ち方とは?

  2016年、私は病を得、終日をベッドで過ごしていた。有り余るほどの時間があった私は株式取引に没頭していた。病院の朝は早く、私の一日は、夜9時に就寝し早朝に目が覚めるというサイクルであった。

 株式投資の勝ち方は簡単だった。早朝、まず米国の情報をありとあらゆるメディアから集める。雇用統計、ダウ平均の動き、大統領の政策やハイテク企業の新規戦略など、米国依存の日本経済は、恐ろしいほど米国の株価の動きと相関していた。米国が元気になれば日本株も上昇するし、米国が風邪を引けば日本株も下落する。当時日銀は金融緩和政策で午後には恐ろしいほどの金を使い日本のETF(上場投資信託)を買っていたので、いくら金を突っ込んでも絶対に損をしなかった。その結果、同年の私のパフォーマンスは15%を超えた。

 デイトレードをしていると、色々なことに気づく。
 いわゆるプロの投資家は、私のような素人が気づく法則など当然分かっているだろうし、我々アマが絶対に勝てないデジタルトレードを、スーパーコンピュータを使って行っている。
 例えば、この日私は日本株があがることがわかっていたとしよう。すると、その日は、日本株の取引市場が開く午前9時には、同様に日本株があがることを見越して、一気に「買い」が入る。ところが、私のような素人が朝9時に買いを入れても、絶対に安く買うことができないのだ。
 そこで、「成り行き」買いでセットしても、プロが買い占めた後の高値買いになるし、「指し値」買いをセットすれば、プロが先を越して買うことができない。
 プロとは同じ土俵で戦えないと考えた私は「3%の法則」というやり方を考え、株価の3%高でセットする。一日の株価の最高上昇は平均して5%ぐらいだから、2%程度のリターンを頂くというわけだ。これをコツコツと積み上げていったのである。

 

ハイテク技術を持つZARAはプロ
“素人”がZARAと戦う方法は“時間”がカギ

 さて、退院した私は、本業が忙しくなり、株式投資に時間をかける暇はなくなった。いつしか私はプロとの勝負を避け、「時間を味方にする勝ち方」に戦略を変更した。株価は、上がることもあれば下がることもある。うまく買えなくてもファンダメンタルズがしっかりしていれば割安銘柄を買えばよい。
 私は経営コンサルタントだから、ビジネスモデルの秀逸性はすぐに分かる。だからこれだと目をつけた企業の株式であれば、高値で買っても放っておけばいつか株価は上がる。投資額の5%のもうけがでれば売るというルールを徹底して守り「大勝ち」を避けた。この「時間を味方にする戦略」は高いパフォーマンスを私にくれた。

  勘の良い方はおわかりかと思うが、この株式投資の勝ち方は、前回、私がアパレルビジネスで提唱した「ライトオフ時間を長期にする勝ち方」と同じである。トレンドの移り変わりが激しい昨今では、トレンドを読むことは博打に近く、また、超ハイテク技術を駆使したZARAとの勝負は負けが決まっている。したがって、「時間を味方」にし、ライトオフの期間を長期化し、ベーシック型商品を定価販売で売り切ることが勝利の方程式であることを説いた。これは、株式取引でプロとの勝負を避ける戦略と同じである。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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