製造コストは大人用と大差なし!新規参入、ワークマンが子供服市場で勝てる理由とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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製造コストは大人用の服と一緒だが、売価は?

 さて、子供服は大人の服よりも大体3割ほど安く販売されている。

 その理由について一般の人は、「使っている生地など素材の量が少ないから」だと思っている。

 実際、子供服で使用する素材の量は大人の服の5~7割程度なのだが、では製造コストも7掛けなのかというとそんなことはない。実際に工場で生産することになると、大人の服とほぼ変わらないのだ。

 考えていただきたい。工場の製造コストというのは、投入した素材をどれぐらいの時間効率で縫製したかで工賃が決まる。工場というのは固定の塊だから、たくさん作れば安くなるし、少ししか作らなければ高くなるのは大人と一緒なのだ。

 生地の量など、実はほとんど関係ないのである。

 例えば、上代が5000円の子供服があった場合、製造原価は20003000円だろう。

 この20003000円の製造原価の服を60007000円で売るのが大人向けで、「売価」でコントロールしているわけだ。製造原価が安くなるわけではない。

  一方、子供服は、見た目が大人服に比べて小さいため、上代を大人の服よりも安価に見せなければ、消費者は納得しない。だから、あえて7掛け程度で値付けをして、プロパー消化率を高めて販売する手法をとっているわけだ。

 もちろん、工場に協力要請をして、工場の利益を削ってもらうように頼むこともある。したがって、工場も子供服を作るのはできるだけ辞めたいというのは本音だろう。

 しかし、「8200億円」という規模の子供服市場はハッキリ存在する。ここを狙っていかないのは、もったいないということで各社アパレルは子供服に手をだすわけだ。

ワークマンは子供服市場で勝てるのか?

 さて、ここまで子供服の市場特性や規模を考察してみると、ワークマンの子供服は、「安い」「機能性が高い」「評価損金計上までの時間が長い」など、「子供服の勝ちパターン」に沿っていることがわかる。

 したがって、ワークマンの子供服は成功するだろう。これが、私の分析だ。

 ワークマンの株価は下落を続けており、過剰な期待値が元にもどっていると読むのか、将来を案じた傾向と読むのか意見は分かれるところだが、少なくともワークマンキッズは成功の要因をすべて包含しているのは事実だ。

 もし、ワークマンキッズに穴があるとしたら、すでに少子化の日本でレッドオーシャンと化している子供服市場の激戦区に後発で参入して、アパレル同士の潰し合いで勝てるかどうかだろう。

 日本のアパレルも先にあげたような分析はすでにやっているだろうし、ワークマンの主戦場であるショッピングモールには雨後の竹の子のように子供服売場が乱立している。この中でいかに頭角を現し、「キッズもワークマンで」という打ち出しを見せることができるかどうかが、勝敗を決めることになるだろう。

 

 

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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