「豚丼」に続いて「韓国カフェ」も! 低リスクFCで躍進するワンズトラインの戦略

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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「元祖 豚丼屋TONTON(トントン)」という丼チェーンをご存知だろうか。チェーン展開を始めたのは2021年6月と最近だが、いまやロードサイドを中心に70店舗体制になろうとしている急成長チェーンだ。同チェーンを運営するのが、大阪に本拠を置くワンズトライ(山内仁社長)だ。代表の山内氏は現在40歳。パンクバンドで活動し、19歳でプロデューを果たすという異色の経歴を持つ山内氏は、どのようにして急成長チェーンをつくりあげたのか。

低コスト・低リスクの『元祖 豚丼屋TONTON』はコロナ期間中、居酒屋からの転業で大きく躍進。最近では脱サラ開業組も増えている

郊外・ロードサイドを中心に70店舗を展開

 山内氏は23歳のときに音楽活動に一区切りをつけるとカラオケ店の経営を始め、その後、飲食業に参入。「大衆居酒屋あげもんや」を2017年4月に開業し、海外で複数のマスターフランチャイズ契約を獲得するものの、コロナ禍に突入し、その話は立ち消えてしまう。そこで、低コストで開業可能で、テイクアウトにも対応する新しい業態として、「豚丼TONTON」を2020年6月にオープン。翌21年6月にはフランチャイズ展開する「元祖 豚丼屋TONTON」の展開をスタートした。

 山内氏は、バンド活動をしていた当時、年間約300回のライブをこなし、全国を飛び回る生活を送っていたという。プロモーターに連れられて、各地の郷土料理の名店を訪れ、食の地域性にふれたことで、将来は飲食の分野で事業を起こしたいと考えるようになった。

 順調に拡大するも、コロナ禍がワンズトライの居酒屋業態を直撃した。山内氏は次のように語る。

 「コロナのとき、取引先はどうして契約を取りやめることになったのか、自分なりに考えてみた。『あげもんや』は店舗面積40~50坪で月商800万円をめざしていたが、これでは規模が大きく、先行きが心配になるというのは当然のこと」

 当時、同社では弁当店の売上が安定していたため「これからはテイクアウトが有望ではないか」と山内氏は考えた。そこで目をつけたのが、バンド時代に味わった北海道・帯広の「豚丼」だ。そうして「元祖 豚丼屋TONTON」の原型となる店を2020年6月に大阪・南船場にオープンした。

バラとロースの「ハーフ&ハーフ」は968円で提供する

 その後、チェーン展開していく「元祖 豚丼屋TONTON」は2021年6月から営業を開始。店舗数は2023年8月にオープンした「九大学研都市店」(福岡県福岡市)で50店舗となり、23年中に70店舗を超える予定だそうだ。

2023年8月7日にオープンした九大学研都市店(福岡市西区)で店舗数は50店舗となった

 「元祖 豚丼屋TONTON」は、低コストで出店可能で、手堅く売上高を稼ぐというフランチャイズチェーン(FC)モデルとなっている。店舗面積は15~20坪で初期投資は400~500万円、立地は郊外ロードサイドがメインとなる。小規模な店であればオーナーが店に入り、人件費を抑えることができる。月商は300~400万円。低コスト・低リスクを志向しているのが特徴だ。

 山内氏はこう語る。

 「われわれは、加盟を希望する方に『10年続けましょう』とは言わない。逆に『10年続けたい』と言われてもFCオーナーとしてもしんどい。私は20年間経営を行なっているが、リーマンショックや東日本大震災など大変なことが次々と起きた。『元祖 豚丼屋TONTON』は6~7カ月で投資回収が可能なので、商売を続けながら新しいことを考えることもできる」

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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