郊外・ロードサイド立地で存在感増す「韓丼」がめざす「ファストカジュアル」とは

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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接客に代わる新たなホスピタリティ

 現在、社長を務める大島幸士氏は、創業家出身で現在30歳。大手小売業から転じて、2020年4月にやる気に入社した。社長に就任した大島幸士氏がまず取り組んだのが、情報システム部の立ち上げだ。これにより、テイクアウトが大きく効率化され、飛躍的な売上アップをもたらした。大島氏はこう語る。

 「韓丼がめざしているのは『ファストフード』ではなく、『ファストカジュアル』。ファストフードよりも提供時間はかかるが、キッチンにしっかりと投資し、シズル感あふれる専門性の高い商品を提供していくのが基本的な考え方だ。これは創業時から続く当社の理念でもあり、店のつくり方や提供方法は常にブラッシュアップしている」

 韓丼では、お客が券売機でチケットを購入すると、従業員は注文に従って調理を開始。商品ができあがるとベルで知らせる、フードコートに近いスタイルをとっている。直近の新店では、店内に配置したモニターで番号を表示してお客に知らせるようになっている。食事が終わると、お客自らが空いた食器を返却口まで持っていく。

新堀川本店の厨房と客席の様子。厨房は客席にせり出していて、奥の方に返却口を設けている
調理のシズル感やライブ感にこだわっているのが韓丼の特徴だ

 このように韓丼では従業員がお客に接する部分は少ない。一方で、店舗の中央にオープンキッチンを配置し、調理のライブ感やシズル感を大きくアピールしている。こうした試みは、接客に代わるホスピタリティの新しいかたちと言えるだろう。

 大島氏が唱える「ファストカジュアル」とは、「ファミリーレストラン」よりワンランク上の「カジュアルレストラン」のクオリティをファストフードのかたちで提供する業態を意味する。つまり、カジュアルレストランのクオリティと専門性を維持しつつも、サービスを簡略化して、低単価で提供するというわけだ。物価高騰の折、外食を利用するお客は専門性が高く、おいしい食事を求めている。今後もこうしたファストカジュアルの出店が増えていくであろう

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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