だから“世界一”になれた!「ジョイフル本田をつくった男」が教える“失敗しない”方法

千田直哉
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前回に引き続き、本田昌也ジョイフル本田創業者の一代記を掲載する。やんちゃな材木屋の次男坊は、いかにして“世界一のホームセンター”と評された同社をつくりあげたのか?そこには、独特の経営に対する考え方があった。(『千田直哉のPAPERBLOG+』より再掲載。一部修正加筆した)

ジョイフルホンダ

“専門バカ”なってはいけない

本田さんは、従業員の知識習得については、ことのほか重視してきた。

たとえば、ジョイフル本田が扱う農業資材には、噴霧器、ヘアピン杭、防草シート、肥料や飼料や育苗ハウス、米袋…もあり多岐にわたる。

部門の担当者は、誰よりもこれら11品について知る必要がある。ただ、これを極めすぎると農業資材の担当者が農業資材のことしか知らない“専門バカ”になってしまう可能性がある。

本田さんは、「知識習得は大事だけれども、“専門バカ”なってはいけない」と話していた。

 「木材の担当者が木材のことしか知らないというのでは困るのです。工務店さんが、建物の図面を持ってきたら、そこから即座に必要な商品を見極め、売場にご案内できるようにならなければいけません。しかも、商品には《関連》がありますから、《関連》も大事にしたい。この前、材木屋に勤めていた方が定年でやめて、お金はそれほどいらないけど、生きがいとして働きたいと志望動機を話してくれました。うちには、そういう人材に来て欲しい」。

また従業員のホスピタリティの教育にもずいぶんと力を入れた。

 「自分たちにご飯を食べさせてくれるのは誰かと言えば、お客様です。売場にご案内し、何かを尋ねられたら説明するのは当たり前のことです。これは、パートだから社員だからとか、頭がいいとか悪いとかの問題ではありません。ローコスト経営や頭で考えた経営だとどうしても、行き過ぎたセルフサービスのような、いまの形になってしまうけれども、そうじゃありません」。

 「CS(顧客満足)の要はES(従業員満足)にあり」と言われるようになる以前から、教育の一環として、男女やパートか社員かなどにかかわらず、勤続10年目の全従業員を1週間、海外に行かせるようにしていた。

海外研修についても考え方がまた粋だ。「宿題はなし。感動を味わうだけでいいから見ておいで」というものだった。これでモチベーションが上がらないわけがない。

 

工具は先端が命なんです

商品知識を詰め込み、経験を積んだ従業員には、商品開発をさせた。

 「カタチになったものを仕入れるだけなら誰にでもできます。自分たちで商品化する努力が必要なんです。だから問屋任せにはせず、自分たちで探しなさい」と鼓舞し続けた。

グローバルホームセンターを標榜しているとおり、ジョイフル本田は各国の大使館員にもよく知られた存在だ。新しい商品を開発するにあたって必要とする原材料や製品の窓口がどこにあり、担当者が誰であるかを聞くために大使館の門戸を叩くからだ。ただ、「聞きたいことを聞いてしまえば、その後は2度と来ない。あとは自社ですべてやっているようだ」と各大使館員は口を揃えてジョイフル本田の従業員を評した。

独立独歩。国家や行政をハナからあてにせず、自社商品開発に当たってきたのだ。

商品開発の要諦についても本田さんは社内で力説していた。

 「たとえば、工具は先端が命なんです。だから値段ではなく、先端を意識しないといけません。それは目利きとかいうことではなく、考え方の話です。それがうちに定着しているかどうかはわかりません。でも教えてはいます。そしてそういうことが分かっていれば、働いていても楽しいはずです」。

製造小売業(SPA)という言葉が流通業界になかった頃から、着々と製造小売業化を進めてきたのがジョイフル本田だった。

本田さんは、仕事のほとんどの時間を店舗で過ごした。毎日が出勤日であり、よほどのことがない限り、休むことはなかった。お抱えの運転手も不休であり、休めるのはクルマの持ち主が海外出張している間くらいだった。

「本田さんは怪物だ。あの努力は他の人にはできない」。本田さんを小学生時代から知る幼馴染が余りの馬力に舌を巻いていたほどだ。

毎晩、ファックスで店舗別33部門別の売上数字が茨城県小川町の自宅に届く。気になる売場には、翌朝、直行し、「どうなっているんだ!」と発破をかける。

「売場は生きているので、継続させるには、しょっちゅう何か手を掛けないといけない」と本田さんは話していた。

 

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