「あたらない牡蠣」がついに誕生! ゼネラル・オイスターの牡蠣食文化へのあくなき情熱
前回の記事では、「牡蠣」の六次化を進めているゼネラル・オイスター(東京都/吉田琇則社長)が、コロナ禍にありながら業績を回復することができた要因についてレポートした。この背景には、同社が飲食業者に自社の牡蠣を認められるために重ねてきた努力がある。
もっと牡蠣を浄化する方法を求めて
「牡蠣好き」の人は多い。しかしながら、牡蠣を敬遠する人もまた多い。敬遠する理由は「牡蠣は“あたる”ことがあるから」だ。
牡蠣の「あたる」というメカニズムは、牡蠣がエサである海中の植物性プランクトンを取り込もうと、小さな体でありながら1時間に約20ℓ、1日に約400ℓの海水を吸っていることにあるという。牡蠣が大量の海水を吸う分、上流の川から未処理の生活排水や産業排水などに含まれている菌やウイルスも吸い込み、身の中にためてしまう。それを人間が食べることによって「あたる」という症状になるとされている。
これまでも牡蠣業者は、この「あたる」という症状を最大限なくすため、浄化機能の開発に努めてきた。これまで主流だったのは約75年前に三重県志摩市の的矢で開発された浄化システムで、プールに入れた海水に紫外線を当ててきれいな状態にして、そこに牡蠣を入れてウイルスを吐き出させるという技術であった。
そうしたなかでゼネラル・オイスターは「もっと牡蠣を浄化できる方法がないか」と考えた。浄化技術を追求するとともに、2008年4月より一般飲食店向けに牡蠣の卸売事業を本格的に開始した。そこでたどり着いたのが、同社が「8番目の海」と名付けている「海洋深層水」を使用した浄化技術であった。海洋深層水とは、海面より200m以上深いところにある太陽の光が届かない海水で、地球の92%以上がこれに相当する。
海洋深層水の特徴は大きく3つ。まず「清浄性」。表層水と交わらないことから生活排水が流れ込まずに人間に害のあるウイルスが存在しないこと。次に「富栄養性」。太陽の光が届かないことから牡蠣のエサである植物性プランクトンが光合成できず、これによって成長に必要な成分が消費されない。そこで栄養塩類が表層水と比べて約30%も多い。 そして「低温性」。牡蠣が生育するためには“冬”が必要となり、海洋深層水は年間を通じて5~8度の低温が一定している。