個店経営と「画一化」の論理とは

島田 陽介(島田研究室代表)
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店舗と品揃えの画一化に最適なのは「大商圏」

 個店経営と画一売店チェーンは、きわめて対照的な方法論である。

 「画一化」とは、品揃え(アソート)と店舗売場を、どの店もハンコで押したようにまったく同じにすることである。とすれば、画一化にもっとも適しているのは、商圏を限定することではなく、逆に、商圏をできる限り広くとることである。

 日本の人口1億2000万人を12の商圏にわけ、そこに「ティファニー」を12店舗出店したとする。この場合、店舗売場とアソートはまったく画一的でいい。「商圏を広くとる」というのは、「お客を選択する余地が広くなること」だからである。

 商圏1000万人中の1%が年1回来店すれば、年間の来店客数は10万人、1日当たりだと約300人になる。これは消費財メーカーが採っている論理と同じである。消費財メーカーは、ナショナルブランド(NB)数品種を、「全国」という1つの超大商圏をターゲットに売っている。消費財メーカーは、チェーンをはじめとした小売店が販売を担っていることから自ら店舗を出さなくて済むだけで、その原理は「ティファニー」の画一店全国出店と同じである。これはネット流通業にも通じる。アマゾンなら全国、イオン(千葉県)のネット販売であれば少なくとも店舗を超える範囲に、店舗なしに商圏を確立できる。

個店経営と画一売店チェーンは、きわめて対照的な方法論である。(i-stock/Vorawich-Boonseng)

 対して、チェーン理論は「商圏を限定する」ことを説いている。限定しなければ、多数のチェーン店を展開できないと考えたからだろう。商圏を限定し、品揃えを画一化した場合、店がお客を選ぶ余地を自ら小さく限定することになる。どんなチェーンも、商圏に居住するすべての生活者の要求に応えるアソートを実行するのは不可能である。たとえば、コンビニエンスストア(CVS)、食品スーパー(SM)、ドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)、スーパーストア、ビッグストアなどは、一定の「アソート・テーマ」を選ぶしかない。

 だが、テーマを選んでアソートすることは、商圏の世帯人口を限定するだけでなく、「お客を選ぶ」ことにもなる。同業・異業との競争もある。また、アソートを全社全店で画一化すると、お客を獲得するうえでの許容範囲が狭くなる。むしろ、それを自ら狭くしようというのがその理論の本質である。

外食業と流通業で異なる事情

 だが、商圏とアソートのテーマを限定し、全チェーン店の品揃えを画一化して成功している例外的な事例がある。

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