外国人アルバイトの力を使って、顧客との関係を構築したコンビニ
このシリーズは、部下を育成していると信じ込みながら、結局、潰してしまう上司、あるいは逆に人材活用が上手で成功している企業や店を具体的な事例をもとに紹介する。いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後に「こうすれば解決できた」「ここが良かった」という教訓も取り上げた。今回は、私が頻繁に行くコンビニエンスストアで経験する事例を紹介したい。
第26回の舞台:都内西部のコンビニエンスストア
(店長以下、アルバイト35人)
顧客との関係性も引き継いでくれるアルバイト店員
「今週末で私はアルバイトを辞めます…」
3ヵ月程前、スリランカから日本の私立大学でIT戦略を学ぶために留学している女性(23歳)が顔を少し赤らめて話す。彼女がレジ打ちをするところへ、私が150円のコーヒーを買うために近寄ったときのことだ。
3年程前から女性は週2日程、アルバイトとしてこの店で働く。私が勤務する税理士事務所のそばにあるので、週3∼4日はコーヒーを購入する。いつしか、時々、挨拶程度の会話をするようになった。
女性は流ちょうな日本語で、はにかんだ表情を見せつつ、「ラージサイズ(150円)のホットコーヒーですか?」と尋ねてくるようになった。私が頻繁に買うので、覚えたのだろうか。この店の店員で、こんなことを聞いいてくる人はいない。毎回、声をかけられるのがうれしかった。ほんのわずかの間、心が通い合っているような感じになっていたからだ。通常、コンビニエンスストアに限らないが、アルバイトの店員とはこのような関係にはならないから、印象はより一層強くなる。
数日後、雑誌コーナーで陳列作業をする彼女と会った。今後の予定を聞くと、「日本のIT企業に就職をするために、シューカツを始めたい」と答えていた。「がんばってくださいね」と声をかけると、「ありがとうございます」とまた、いつもどおり、顔を赤らめる。
3か月後の今、スリランカ出身の新たな留学生がアルバイトとして働く。店長によると、彼女は辞める前に自らの後任として紹介したのだという。私は150円のコーヒーを注文すると、笑顔を見せながら「(前任者の女性から、私のことを)聞いています」と話した。
私は、この店に通うのがささやかな楽しみとなっている。