「時代に遅れ続ける」だから持続可能 京都の老舗鞄メーカー「一澤信三郎帆布」悟りの経営とは
メーカーにとって真の持続可能とは
「うちの商品は3世代にわたって愛用してくれる人もたくさんいる。修理できることに驚かれることもある。海外で製造していると、そもそも修理は物理的に難しいだろう。繊維も化繊だと、傷んだらおしまい」と一澤社長は、効率化と拡大路線から抜け出せなくなっているものづくりの現状をクールに分析する。
製造業はいま、「遅れられない」とばかりに持続可能であることに躍起になっているように見える。まるでそれが製造業としての時代の最先端であるかのように…。だからこそ、1905年の創業時から変わらず、ものづくりの理想を追求し続ける同社が、結果的にその先頭を走っているようにみえるのは痛快だ。
コロナ禍ではもちろん、販売機会が激減した。「時間がたっぷりあるから」と一澤社長が提案したのが、顧客宛の手紙だ。何気ない一言から「一澤だより」を制作、5万人に向けて郵送した。撮影も文章もイラストもレイアウトも、すべて社内のスタッフだけで手づくりしたというこの冊子は、顧客から喜ばれ、多くのお礼状が届いたのだという。数ヶ月かけて作るために、これまで2号のみの発刊だが、120周年に合わせて3号めを出す予定だ。
「どうすれば、持続可能なものづくりができるのか?」。そんな質問を一澤社長に投げかけるのは、どうやら愚問でしかなさそうだ。