ITで流通を変える! AI・IoTを駆使した“第4次産業革命”を起こす_トライアルホールディングス代表取締役社長 亀田 晃一
──スマートカートをどのように活用しますか。
亀田 スマートカートは、プリペイドカードに登録している顧客情報、買物履歴、カートの位置情報などを紐づけることができます。たとえば、過去の購買履歴や似たような購買特性がある顧客の購買履歴に基づいて、適切なクーポンを発行することで、興味がある人に特定の商品を宣伝することができます。さらに地域特性や性別、季節や時間帯などの情報を加えることで、さまざまな提案ができるようになります。
──こういったビッグデータの活用を、ECではなく、リアル店舗で行う強みはどこにありますか。
亀田 すでにOne to oneマーケティングをモノにしているECと比べて、リアル店舗の持つ強みは非計画購買にあります。実店舗で買物をする際、約2割が計画購買、約8割が非計画購買と言われています。買物客の購買意欲を刺激できるような売場づくりを、AI、IoT技術を活用することでつくっていきたいと考えています。
ID-POSをはじめ、ビッグデータを持っている小売業はたくさんあります。しかし、その中でどのデータを抽出すべきか、どうやって分析するのかがわからない企業が多数です。研究会は、試行錯誤しながらそのノウハウを蓄積しています。
──アイランドシティ店の現状の利用状況はいかがですか。
亀田 17年11月に導入したプリペイドカードは、アイランドシティ店での利用率は約6割で、スマートカートの利用率は約4割。これは計画以上の数字です。とくに利用率が低くなるだろうと予想していたシニア層の利用率が想定以上でした。
プリペイドカードの利用率がもう少し高くなれば、現金利用不可で、プリペイドカード決済のみ可能、ということもチャレンジできるようになるのではないかと考えています。そうなれば経費削減が実現するので、その分をさらにお客さまに還元できると思います。
──アイランドシティ店の次のスマートストアについては何かお考えですか。
亀田 まだ検討中です。まずは特定のエリアで同様のコンセプトの店舗を展開したいと考えています。
いずれは、品出し作業のロボット化等も可能になるかもしれません。これからも色々なことにチャレンジしたいと考えています。
新店は小型中心、生鮮とH&BC強化
──スマートストアに限らず、店舗への投資はどのようにお考えですか。
亀田 近年は15~20店舗の新規出店を続けてきました。今後もこの出店ペースは維持する予定です。
トライアルは、02年の金融恐慌時に、九州で不振が続いていた小売店舗の居抜き出店で急成長してきました。そして、08年から約10年間、1200坪のスーパーセンターを地方の郊外に出店するというモデルを続けてきました。
しかし、この数年人件費単価が年率で約3~4%ずつ上がり続けているうえ、地方は人口が減り続けているため採用自体が容易ではなくなってきています。
そのために取り組んでいる1つが、上記のデジタルを活用した無人化・省人化で、同時に実験を進めているのが小型化です。300坪や150坪タイプで、生鮮食品とH&BCを強化した店舗にチャレンジしています。とくに生鮮食品は後発ですが、企業規模による仕入れ価格差がそこまで大きくなく、まだまだサプライチェーンの効率化が進んでいないカテゴリーなので、力を入れていきたいと思っています。
また、小型店舗ほどデジタル活用による自動化もしやすいのです。
──既存の1200坪型のスーパーセンターはどのようにされますか。
亀田 まだまだ工夫の余地があります。たとえば、来店客のほとんどは車で来ているのに、カー用品、自動車整備、保険等のサービスは十分に提供できていません。「グローサラント」が話題となっていますが、飲食サービスの提供も可能だと思っています。
われわれは小売企業ではなく、サービス企業になる必要があります。いろいろな企業と提携することで、地方のライフラインとなるような店舗をめざします。
──新規出店のペースを維持し、既存店をてこ入れすることで、これからも拡大を続けていく計画ですか。
亀田 われわれは将来、株式上場も視野に入れています。上場時に売上高1兆円を目標にしています。また単なる小売企業ではなく、IT企業、サービス企業として、第4次産業革命が進む中で、日本の流通業界を変えていきたいと考えています。