ITで流通を変える! AI・IoTを駆使した“第4次産業革命”を起こす_トライアルホールディングス代表取締役社長 亀田 晃一
──第4次産業革命に向けて、具体的にどのような方針で動いていますか。
亀田 17年5月、小売業、食品メーカー、日用品メーカー、卸など、流通小売業に関わる業種を超えた企業が参加するリテールAI研究会(東京都/田中雄策代表理事)が発足しました。当社もそのメンバーの一員です。
この研究会は、オープンイノベーション(複数の企業や組織で技術やアイデアを共有し、新しいビジネスモデルを開発する手法)を採用しています。AI、IoTを駆使して、売場の可視化や、受発注の自動化、レジなし決済などをテーマに研究を進めています。
今後、業態を問わず、有力小売業の皆さんの参加も募り、研究を進めていきたいと思っています。当社の無人店舗技術を開放し、研究会の加盟企業等への実験導入を積極的に支援します。小売業の皆さん、ぜひ、一緒に「第4次産業革命」を推し進めていきましょう。
カメラが欠品を認識、自動発注の精度上げる
──研究会ではどのようなことを検証していますか。
亀田 大きく分けて3つです。スマートカメラを利用することで「人間の目を機械の目に替える」こと。機械の目によって得たビッグデータを「人間ではなくAIが分析、判断する」こと。その判断に基づいた行動を「人間ではなく機械(ロボット)が実行する」ことです。
近年、カメラの単価が安くなり、画像認識の精度も上がっているため、機械の目に置き換え、AIが判断するところまではできるようになりました。ロボットによる行動はこれからの課題です。
──機械の目、AIによる判断を、リアル店舗でどのように活用しますか。
亀田 いちばんわかりやすいのは受発注の自動化です。生鮮食品、日配品以外は多くの小売業で自動化されていますが、トライアルはこの2つも自動発注できるように実験をしています。
アイランドシティ店のように、スマートカメラを店内に張り巡らせることで、これまで人の目で確認していた欠品を、カメラが認識できるようになりました。欠品してから人が気づくには一定の時間がかかりますが、カメラは正確な時間を把握できます。どの商品がいつ欠品したかという正確な情報を得ることで、より精度の高い自動発注を実現できるようになるのです。
また、これまで長年経験を積んだ職人が考えてきた棚割りをAI化する実験も行っています。この4月からAIベンチャー企業と提携し、職人の知識をAIに学習させることで、AIが棚割りを提案できないか、実験と検証を進めています。
店舗の運営コストを下げるうえで最も効果的なのは、レジのない決済です。アイランドシティ店は、事前に登録しているプリペイドカードを入口ゲートにかざし、購入したい商品をスマートカートについている端末でスキャンし、出口ゲートを出れば、自動決済されるという仕組みで、レジレス決済を実現しました。
「AI、IoTを活用して、買物客の購買意欲を刺激する」
リアル店舗の強みは8割の非計画購買
──AI、IoTの活用によって、店舗運営の効率化以外に、売上アップにつながる施策はありますか。
亀田 今、大手広告代理店と提携し、ショッパーマーケティング(消費者全体をターゲットにするのではなく、店に買物に来た人に対して、店頭での購買を促すマーケティング手法)を研究しています。
これまでのマス媒体による広告は、見る人のほとんどはその商品に興味のない人達なので、決して効率的なマーケティングとは言えなくなってきていると私たちは考えています。そこで、ECが行っているようなOne to oneマーケティングにできるだけ近い広告を、タブレット付きのスマートカートでやってみようと考えました。
また店舗全体をサイネージ化することで、売場を1つの商品でジャックすることが可能になります。その商品が最も売れる時間帯に、店舗全体のサイネージで一括プロモーションすることで売上は劇的に変わります。山手線の広告ジャックと同じで、施設全体でのプロモーションは小さな画面と異なり迫力があります。しかも、その商品をその場で買うことができるのです。