世界で戦う企業は当社と同じ製販一体型のビジネスモデル=神戸物産 沼田昭二 会長兼社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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 一般的な総菜専門店は原価率が60~70%でロス率が5~10%だと思いますが、当社の場合、ロス率は1%しかなく、原価率も50%と低い点が特徴です。つまりお客さまに安く提供できるということです。またロス率が低いということは、利益を確保しやすいということもそうですが、最も大事なポイントは食あたりなどの事故のリスクがきわめて低いということです。実際に、過去に一例もありません。

 「Green’s K」は1号店の亀戸店(東京都)が、たいへん好調に推移しており、今後も同店をモデル店舗に継続出店していきます。亀戸店は、あえて駅から少し離れた、人通りのあまり多くない場所に出店しました。この立地で成功すれば、どこにでも出店でき、一気に多店舗化できると考えたからです。当面の出店計画としては、「Green’s K」は10年8月末までに6~7店舗つくる予定で、ローソンとの合弁事業である「神戸ほっとデリ」(兵庫県/沼田昭二社長)も25店舗ほどの新規出店が決まっています。

──今はローソンとオークワと合弁会社をつくっていますが、他にも多くの企業から話が来ていますか?

沼田 コンビニエンスストア(CVS)もSMも上位企業の数社から打診を受けています。ただCVSで組むのはローソンのみです。ただし駅構内ビジネスはまた別の電鉄系企業と組むということが決まっています。SMからも相当数の話がありますが、現段階で発表できる話はありません。

製販一体の食のSCMを構築する

──さて、神戸物産は工場のM&Aだけでなく、エジプト国内で大規模農業を行ったり、北海道でも次々と農地を取得されています。このねらいと今後の計画を教えてください。

沼田 当社の強みである製販一体の食のサプライチェーンマネジメント(SCM)を構築するためです。自社農園で農作物を栽培し、自社工場で加工し、原材料の生産から商品の加工・製造までを行い、業務スーパーと「Green’s K」で販売する。他社にはない仕組みをつくることにより、食の履歴を明確化した安全・安心な商品を圧倒的な低価格で販売できます。

 エジプトでは約3000ヘクタールの広さで農業をしていますが、国内ではまだ600ヘクタールぐらいの規模なので、1000~2000ヘクタールの規模にまで広げて行きたいです。また北海道では牧場を取得しましたし、畜産加工場と水産加工センターもこれから建設する計画です。

──食のSPA企業として、どんどん進化させていくわけですね。最後に、10年10月期の見通しについて教えてください。

沼田 10年10月期は、過去最高売上、最高益を達成するのはほぼ間違いありません。それだけでなく、先日、期初予想からの大幅な上方修正を発表したのですが、さらにもう一度上方修正を発表する必要性がでてくるかもしれません。今期も積極的にメーカーのM&Aを行い、製造技術・ノウハウを融合させることで、製販一体企業の当社のビジネスモデルをさらに磨いて行きたいと考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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