世界で戦う企業は当社と同じ製販一体型のビジネスモデル=神戸物産 沼田昭二 会長兼社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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──開発する商品はどのように決めているのですか?

沼田 最も大事なことはお客さまが必要とされる商品であるということ。次に工場の生産ラインとマッチしているかどうかということです。

 効率的な生産体制を構築できるかどうかが非常に重要で、1つの工場でたくさんのアイテムをつくれば非効率になりますし、工程数が多く手間ひまが掛かるものは一切つくらないという考えです。たとえば、肉の太公という子会社がありますが、M&Aした当時は、製造アイテムは約100ありましたが今はわずか3アイテムに絞り込んでいます。

独自の強み「パーツアッセンブル方式」

──神戸物産の商品製造における最大の特徴は、総菜などをいくつかの「パーツ」に分けて、それぞれを自社専門工場で生産し、店舗等で仕上げる「パーツアッセンブル方式」です。この発想はどのようにして生まれたのですか?

沼田 トヨタ自動車やキヤノンなど、日本の有力な製造業は、パーツアッセンブル方式で生産していますから、食品だけこうした仕組みがないのが不思議なくらいです。世界を舞台に戦っている企業は、食品でもすべてパーツアッセンブル方式です。

 ただ食品は、賞味期限が短いという特性があります。そこで、各々のパーツをいかに安定生産し、どこでどのように組み立てるかということが大事になります。

──食品小売業が今から「パーツアッセンブル方式」をやろうと思っても、実現は難しいと思いますか?

沼田 ローソンの新浪社長が新聞報道で「70億円投じて7年かけてもできなかった」という趣旨のことを言っていますが、それが事実だと思います。

──自社で「パーツアッセンブル方式」を確立するのが難しいからこそ、多くの小売各社が神戸物産の総菜分野における食品製造ノウハウに興味を持っているのだと思います。その総菜専門店「Green’s K」の1号店を09年10月にオープンさせましたが、この分野の成長戦略をどう描きますか?

沼田 当社にとって中食事業は、次世代成長事業という位置づけであるとともに、当社がいちばん得意としている分野でもあります。そもそも当社が物販小売業をFC展開しているのは、スピーディな多店舗展開が可能でスケールメリットを創出できるからです。ですからこれまでは物販小売業の展開による企業成長を優先させてきました。しかし最終的な当社の事業の落とし込み先は中食・外食事業であると考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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