知恵を出して価値ある商品づくりを追求、「デザイン革命」で新たな価値創造=エステー鈴木喬社長
今後は、主力商品である「エアケア」と防虫剤などの「衣類ケア」に経営資源を集中していく考えです。さらに、「エアケア」や「衣類ケア」の中でも、ブランドを絞り込んで、強いブランドはますます強くしていきます。
当社が扱っている商品は、洗剤や紙製品のような生活必需品ではなく、いわば「ニッチ(すき間)商品」です。だから、これからも大きな拡販の余地が あり、アイデア次第で需要はまだまだ伸びます。エステーは「グローバル・ニッチ ナンバーワン」を目標に、さまざまな新しい提案をしていきます。
商品開発では、今期の柱として「デザイン革命」を掲げています。日用品は、他の商品に比べて、デザイン面で遅れていて、日用品の最大の付加価値は デザインだと思います。デザインに特化すれば、競合商品と大きく差別化できます。しかし、デザインといっても、単に形状の美しさを実現するだけでなく、シ ンプルな機能美、使い勝手のよさ、コストダウン、商品とパッケージの統一感なども追求して、「売れるデザイン」をめざします。
今まで、エアケアは部屋の隅に追いやられ、隠して使われてきました。しかし、当社はエアケアをインテリア用品に格上げしたいと考えています。
──デザイン革命」の第1弾として、9月18日に主力商品の「自動でシュパッと消臭プラグ」と「消臭プラグ」をフルモデルチェンジしました。
鈴木 この2つを「デザイン革命」の第1弾に選んだのは、エアケア市場では電子式が世界を席巻すると考えているからです。
殺虫剤ではすでに世界的に電子式が主流になっています。電子式消臭芳香剤は効果が最後まで一定というメリットがあり、アメリカやヨーロッパではす でに電子式が主流です。ところが、日本ではまだそれが実現していません。だから、国内では電子式の消臭芳香剤に大きな可能性があり、当社にとっては、まさ に次の成長エンジンになる商品と位置づけています。ここを押さえておけば、エアケア市場で大きなシェアが取れると見ています。
ここ数年、当社は新商品で大きなヒットを飛ばせませんでした。それは、足元を見ずに、遠くの「青い鳥」ばかり探していたからです。不況の時代には、まったく新しい「世にない商品」だけを開発していてはリスクが大きくなります。
そこで、今ある強い商品をより強化するという堅実な方法を採って、デザインを切り口にして、既存の主力商品をモデルチェンジしました。
しかし、単にデザインをよくするだけでなく、研究や製造部門とともに、お客さまのご要望にも応えて、既存の商品とはまったく違うものをつくりまし た。2つの新商品とも旧型に比べて25%スリム化して、コストを下げ、品質向上に努めました。これにより、店頭にもより置きやすくなりました。
ベンチマークは任天堂
──世界的に活躍する、デザインオフィス「nendo」の佐藤オオキさんをデザイナーに起用したのも注目されます。
鈴木 以前から、私のもやもやしているデザインに対する気持ちを形にしてくれる方を探していて、知人の紹介で佐藤さんとお会いしました。話しているうちに、私と 波長が合うと感じて、デザイナーとしての起用を即決しました。後になって、『Newsweek』誌で「世界が尊敬する日本人100人」に選出され、世界的 な美術館にも作品がコレクションされている、有名なデザイナーであると知りました。
──すでに小売店の店頭にも商品が並んでいますが、小売側の反応はいかがですか。
鈴木 おかげさまで、予想以上に好評で、順調なスタートを切りました。「自動でシュパッと消臭プラグ」は新しい香りも加えて5種になり、3尺の専用什器をつくって、セットで展開することを提案していますが、大手チェーンでは積極的にセットで導入していただいています。