SMは着実に地域シェアを拡大することでしか勝ち残れない=アークス 横山清 社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
Pocket

──シェアを高める、すなわち売上高を伸ばすためには、競合店のお客を自社の店舗に取り込む仕掛けが必要になります。

横山 そうです。集客を図ってシェアを拡大する(=売上を伸ばす)最も簡単な方法は、ディスカウント、つまり安売りです。リーマンショック後からはとくにその傾向が顕著になりました。ただ、多くの企業は、バスタブに利益という水がたまっていないにもかかわらず栓を抜いてしまったようなもので、どんどん利益を減らしてしまいました。もともとSMは生産性が低い体質なのに、利益を減らして大安売りするという事態が多く出現したのです。身を削っての安売り競争は避けなければなりません。

北海道のSMシェアは30%を取る

──北海道では、アークスグループ、コープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)、イオン(千葉県/岡田元也社長)グループなどの競争が峻烈を極めています。アークスグループのSM業態内シェアは、どこまで高めることができると考えていますか。

横山 北海道でのSMシェアは、30%ぐらいまでは高めることが可能だと考えています。前述のとおり、ただでさえ生産性が低いSM業態は、シェアを高めなければ競争優位な状況をつくれないですし、勝ち残ってもいけません。

 SMは、同一フォーマットでナショナルチェーンを構築するのは難しいと考えています。だから今は、まず北海道でのシェアを確実に高め、圧倒的な競争優位性を身につけるしかありません。

 北海道は、四方を海で囲まれているという特性があり、規模的にはスーパーリージョナルエリアだと言えるでしょう。クルマや電車で5~10分圏内に200万人が住むといわれる札幌エリアにおいて、当グループは15%ほどのシェアがあります。北海道の人口の約40%が札幌エリアに集中しているので、ここでのシェアを高めるということは全道シェアを高めることと同義なのです。

 北海道の競争環境は、プレイヤーが交代しながらどんどん厳しくなってきました。

 簡単に競争の歴史を振り返ると、北海道には40年近く前、長崎屋さんが大手として初めて進出し、その後、ダイエーさんや西友さん、イトーヨーカ堂さんが続きました。イオングループさんは大手としては最後に進出してきました。

 最盛期の長崎屋さんは、北海道で1000億円近くの売上があり、全売上高の20%ほどを北海道の売上が占めていました。イトーヨーカ堂さんのピーク時の売上は北海道だけで1000億円を超えていたと記憶しています。それが今では、700億円台になっています。

 大手企業はこれまで、他を圧倒する大規模な商業施設をデンと構えることが多かったのですが、もともと少ない商圏人口をフルに集客しても採算が合わないような店舗をつくっても失敗してしまうわけです。

 しかも、北海道は全国平均と比べて少子化や高齢化、人口減少が進むスピードが速い。生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が減って経済行為が停滞すれば、需要はおのずと減少します。

1 2 3 4 5

聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態