アークランズ誕生でビバホームが消滅へ……吸収合併が意味するところとは

棚橋 慶次
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“ムサシ流”が徹底されるビバホーム

 ビバホームの買収により売上規模が3倍超となったアークランドサカモトは、M&Aの成果をあげるべく、改革に着手する。まず手をつけたのは、“ムサシ流”の徹底だ。取り扱い商品では、ムサシが強みとする自転車や農業資材の品揃えを強化、総合ペットショップ「ニコペット」のビバホーム店舗への展開も加速していく。

 現場オペレーションも、ムサシがこれまで取り組んできた棚の高さの厳格化、園芸コーナーでの庭造りなどが励行される。また、ムサシはコスト管理にも厳しいと言われており、ビバホームに対して徹底した在庫管理を要求するといった話も聞こえてくる。

 こうした取り組みを浸透させるのは簡単ではない。ビバホームの従業員との対話を繰り返すなど地道な取り組みが必須であるのは間違いない。

 では、なぜアークランドサカモトは100%子会社のビバホームを吸収合併したのだろうか。

 他業態に目を向けると、ツルハホールディングス傘下の「くすりの福太郎」「ドラッグイレブン」、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス傘下の「ユニー」「長崎屋」は、買収後もそのまま子会社が残されている。

 子会社が存続するケースでは、店舗の屋号もそのままである場合が多い。「ダイエー」がイオンの子会社としていられるのも、いまだ高い知名度を誇るダイエーブランドを残すためとも言われている。

 今回の吸収合併でも「ビバホーム」屋号はそのまま継続するということだが、今後の帰趨は注目されて然るべきだ。オペレーションや品揃え、店づくりが“ムサシ流”に変わるにも関わらず現状ビバホームの看板を残す意味は、「ビバホーム」の高い知名度にあるのだろう。

今後もM&Aが加速?

 吸収合併の理由として考えられるのは、経営効率の向上だ。もちろん、子会社が少なければいいというわけではないが、組織構造がシンプルであれば、経営の意思決定も迅速化する。とくに今後もM&Aを考えているのであれば経営効率の向上は欠かせない。

 少子高齢化・人口減少を背景に、ホームセンターを取り巻く市場環境は厳しさを増しており、同時に業界では生き残りをかけた再編も加速する。22年3月にカインズ(埼玉県/高家正行社長CEO)が東急ハンズ(東京都/木村成一社長)を買収したのは記憶に新しい。

 ビバホームを取り込み、業界5位に躍り出たアークランドサカモト。上位にはカインズを筆頭にDCMホールディングス(東京都/石黒靖規社長)、コーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)、コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)と全国区の有力ホームセンターが立ちはだかる。アークランドサカモトに一休みしている暇はない。

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