「売らない店」にノー? 高島屋のショールーミングストアが“販売”にこだわる納得の理由

堀尾大悟
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D2Cブランドを百貨店で販売?」台湾で見た光景

 このショールーミングストア事業への参入は、百貨店業界の中では後発に思えるが、「実はコロナ禍以前から構想を温めていた」と川口氏は振り返る。「人口減少で国内のパイが縮小しつつある中、従来の来店客を前提にした人を『集める』百貨店ビジネスモデルだけでなく、新しい商品と新しいお客さまとの接点を創出していかなければいけないとの危機感を抱いていた」

 その川口氏が、2019年秋に台湾の百貨店を訪れた際、見たこともないアクセサリーブランドが並んでいるブースに目が留まった。聞くと、それらはすべてD2Cブランドだという。「実店舗を持たず、ネットのみで販売しているブランドばかりを百貨店側が取り扱い、非常に賑わっている。こういう動きが、いずれ世界中の百貨店で起こるだろうという予感を抱いた」(同)

 TTICの社内でも、20代・30代の若手社員に新規事業についてのアイデアを募ったところ、返ってきた回答のほとんどがD2Cブランドだった。「Z世代を中心とする若者に支持されるのはD2Cだ」との確信が徐々に深まっていった。

 その後、2020年に入り、世界中が未曽有のコロナ禍に見舞われる。リアル店舗の営業が制約を受け在庫が滞留する中で、川口氏は、温めていたD2C主体のショールーミングストア構想を実行に移すことを決意。「実店舗と仕入ルートを持つ高島屋の強み、そしてトランスコスモスのデジタルマーケティングとEC事業のノウハウを掛け合わせれば、他にはない魅力を持った店舗ができる」と、パートナーであるトランスコスモス側と連日のようにミーティングを重ね、ミーツストアの実現にこぎ着けた。

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