「売らない店」にノー? 高島屋のショールーミングストアが“販売”にこだわる納得の理由

2022/06/10 05:55
    堀尾大悟
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    百貨店の価値を未来に受け継ぐため「売る店」にこだわる

    マネージングダイレクター兼CEO
    TTIC マネージングダイレクター兼CEOの川口貴明氏

     高島屋とトランスコスモスの合弁会社として2015年に設立したTTICは、実は海外における販路開拓を担う専門商社として、タイやインドネシア、中国などで日本ブランドの海外展開を後押ししてきた実績がある。直近ではバッグブランド「サマンサタバサ」や「アネロ」の海外展開を支援した。このTTICの海外でのネットワークと実績、昨年事業をスタートさせた越境ECの販売チャネルを活かし、今後はミーツストアで展開する商品を、海外での展開にもつなげていく方針だ。またミーツストア自体の海外展開も計画している。

     「3月のプレスリリースの段階で、ASEAN諸国を中心にミーツストアへの出店やミーツストアの海外展開について複数のお話をいただいている。既に店頭では複数の海外ブランドを展開している」(川口氏)

     また、今後の成長が見込まれるソーシャルギフト市場も取り込んでいく。住所を知らない相手にも、SNSやメールでつながっていれば思い立った時にすぐギフトが贈れるソーシャルギフトは、新しいギフトスタイルとして、20代のZ世代を中心に注目を集め、将来は1兆円規模に成長するとの試算もある。このソーシャルギフトに対応するサービスも、5月16日にローンチした。

     「『ギフト』とは、思いを形にする行為。ギフトの贈り手、受け手、さらに作り手の三者で、その思いが循環するような経済圏を育てていきたい」。川口氏はこう語るとともに「だからこそ、展示だけではお客さまや、出店してくれるブランドに価値を提供できない。リアルとオンラインの双方で、しっかりと『売れるメディア』を作っていきたい」と力を込める。

     店頭での接客を通じて、贈り手、受け手、作り手の三者の思いが循環する「場」― それこそが、長年にわたり百貨店が果たしてきた役割だ。その普遍的な百貨店の価値を未来へと受け継いでいくのも、ミーツストアが単なるショールーム機能にとどまらず「売る店」にこだわった理由なのだろう。これからの「新しい小売」のスタンダードを模索するミーツストアの、今後の動向に注目したい。

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