「売らない店」にノー? 高島屋のショールーミングストアが“販売”にこだわる納得の理由
魅力ある新興ブランドを呼び込むための工夫
通常のショールーミングストアは、展示機能に特化し在庫を持たない「売らない店」のスタイルが一般的だ。これはブランドから出展料をもらい、店頭でスタッフが来店客に説明、ブランドと顧客の接点をつくるほか、商品についての定量・定性データを出展企業に提供するというビジネスモデルだ。しかし、ミーツストアは店頭での販売は行わないものの、ギフトコンシェルジュが接客し、専用のオンラインストアで販売も行う、言わば「売る店」だ。
在庫管理については、運営会社のTTICが各ブランドから一定数の在庫を預かり、受注から発送まで行うスキームを採用した。店頭に在庫を持つ必要がなく、出店するブランドに商品の保管や出荷にかかるコストを負わせない配慮だ。D2Cなど新興ブランドが大半なだけに、出店のハードルを極力下げ、魅力ある新興ブランドを呼び込みたいねらいがある。
また、ブランド側にとっての出店動機を高めるために力を入れているのが、店頭でのデータ収集機能だ。店内には4台のAIカメラを搭載。顧客の動線や行動に関するデータを収集・蓄積することができる。
しかし、これらの定量データだけでなく、「ギフトコンシェルジュの接客を通じた定性データこそが重要」と川口氏は力を込める「お客さまの奥にあるインサイトをどう引き出すかがギフトコンシェルジュの重要なミッション。この、店頭で得られるインサイトは各ブランドにとっても大きな価値になる」
「一般的にD2Cブランドは、大手企業に比べて商品化までのサイクルが短い」と川口氏。ミーツストアの店頭で得られた定量・定性データを、その商品化サイクルに適時フィードバックしていくことで、顧客ニーズをとらえた商品をスピーディーに店頭に並べることができる。ここにも、従来の百貨店とは一線を画する「新しい小売り」の形を見ることができる。