メニュー

2021年度決算で過去最高益を達成した国分グループ本社 成長のカギを握る「共創圏」拡大戦略

食品卸大手の国分グループ本社(東京都/國分晃社長)が202112月期の決算を発表した。過去最高益を達成した同社は、第11次長期経営計画の2年目となる2212月期も、目標に掲げた「共創圏の確立」に向けて従来の卸企業にとどまらないさまざまな施策に取り組んでいく。

國分晃社長

12年ぶりの過去最高益

 国分グループ本社の2112月期連結決算は、売上高18814億円(対前期比1.8%増)、営業利益114億円(同42.0%増)、経常利益139億円(同36.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益65億円(同13.5%増)の増収増益だった。経常利益ベースでは09年以来、12年ぶりに過去最高益を更新した。

 國分晃社長は「16年から取り組んできた『卸基盤再構築プロジェクト』で体制・体質が変化し、不況下でも過去最高益を達成する事業運営体制を構築できた」とコメントした。「卸基盤再構築プロジェクト」では、グループマネジメント制度の整備やグループ人材の適正配置、販売業務機能のエリア集約など、グループ組織の再編成に注力してきた。その成果が2112月期の過去最高益につながった格好だ。

 部門別売上高では、「加工食品」が同0.2%増、「冷凍・チルド」が同8.7%増、「菓子」が同2.9%増だった。ニーズが急速に伸長している冷凍食品が牽引し、食品の合計売上高は同3.2%増だった。酒類では「ビアテイスト(麦酒除く)」が同4.0%減だったものの、「酒類」が同0.4%増、「麦酒」が同2.8%増で、酒類の合計売上高は前期とほぼ横ばいだった。

 業態別売上高では、「GMS(総合スーパー)」が同22.8%増、「SM(食品スーパー)」が同1.5%増、「EC/宅配」が同12.9%増と好調だった。「外食ユーザー」も同2.1%増と、コロナ禍から回復傾向にある。一方、「百貨店」は同4.9%減、「一般・業務用酒販店」は同18.5%減と、いまだコロナ禍の影響が大きい業態もみられた。

スタートアップやベンチャーとの提携を強化

 第11次長期経営計画の2年目となる2212月期では、引き続き長計の目標に掲げた「共創圏の確立」の推進に取り組んでいく。

 「共創圏」とは、バリューチェーン全域で、国分グループ本社が仕入先・販売先のみでなく、生産者、物流会社などの事業者や行政、生活者と従来の取引・取り組みの枠を超えて連携することで、新たな食の価値・事業創造をめざすネットワークのことである。今年度は共創圏パートナーとの協業を加速させ、「コト売り」による役務収益の増額をめざす。

 212月に資本業務提携を締結したヨシムラ・フード・ホールディングス(東京都/吉村元久代表取締役CEO)とは、同社の持つ「中小企業支援プラットフォーム」を活用し、地域メーカーの支援による共創圏の構築に取り組む。また、219月に資本業務提携に関する基本合意を締結したDATAFLUCT(東京都/久米村隼人代表取締役)とAIを活用した需要予測に取り組むなど、スタートアップやベンチャー企業との協業を活発化させていく。

 そのほか、今期は「顧客満足度の向上」「新シンプル業務KPIを基準としたバランスの取れた経営改善」「withコロナの働き⽅の確⽴」「地域ビジネスモデルの確⽴」などに注力していく。このうち、「withコロナの働き⽅の確⽴」では、「仕事における幸福度調査」を実施し、従業員個人の人生の価値観と会社の価値観を擦り合わせ、グループの人事制度を進化させていく。

 共創圏の確立について、國分社長は「各社がグループ内のSNSで自社の事例を発信している。従業員がグループ内他企業の取り組みを参考にできる“場づくり”が徐々にできている。このような取り組みでグループ内の化学反応が起こっており、これを社外にも広げていきたい」と話している。

 コロナ禍で既存のビジネスの先行きが見通せないなか、協業先を増やし従来の卸の枠組みにとらわれない取り組みを推進している国分グループ本社。長計で掲げている「コト売りによる経常利益比率30~50%」を達成するには、共創圏の構築による協業パートナーの拡大がカギになりそうだ。