アングル:空前絶後のコロナ対策、日銀のバックファイナンスも誘因に
[東京 27日 ロイター] – 安倍晋三首相が「空前絶後の対策」とうたう20年度第2次補正予算案では、民間金融機関による無利子・無担保融資の経費も追加計上され、融資枠が大幅に拡大した。日銀がバックファイナンスすることへの安心感が積極財政の一因になっているとの指摘もあり、政府との連携が強調されるなか、日銀には今後も国債の購入増が求められるとの見方が強まっている。
空前絶後の対策、歳出は当初予算の1.5倍超
空前絶後の規模で経済を守る――。安倍首相がそう強調したコロナ対応の経済対策は、20年度1次補正予算と2次補正予算の合計事業規模が233兆円に達した。27日に閣議決定された2次補正予算の追加歳出は31兆9114億円。1次補正の歳出規模25兆6914億円と合計すると20年度の歳出総額は160兆2608億円で、当初予算の1.5倍超に膨らんだ。
2次補正に計上された経費のうち、民間金融機関を通じた資金繰り支援には3兆2000億円を計上。1次補正では24兆2000億円の融資枠を想定していたが、申請が殺到する現状を踏まえ、企業の資金繰りに万全を期すため2次補正では約28兆円の融資枠を前提に予算を組んだ。
民間金融機関による無利子・無担保融資は、1日の受付開始以降、申請が急増している。中小企業庁によると、25日時点で申込件数は約18万件、信用保証協会が承諾した件数が約10万件、約1兆8000億円の融資が決まった。
日銀は22日、緊急経済対策に盛り込まれた民間金融機関による無利子・無担保融資の促進を狙って新たな資金供給手段を決定。日銀は30兆円の資金供給を想定しているが、1次、2次の補正予算で想定されている融資枠の合計は52兆円超となり、日銀の想定を大きく上回る。
財政アナリストは「日銀がバックファイナンスしてくれることを当てにして、大きめの数字を盛り込んだ可能性は否めない」と指摘する。
財政ファイナンス、近い将来の脱却は不可能
日銀は4月の金融政策決定会合後の声明文で、国債の購入上限を削除。「政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ」と明記し、一段と積極的な国債購入方針を示したことで、「日銀は財政ファイナンスに踏み込んだ」(外資系証券)との見方が強まった。
デフレ脱却を目指して、政府・日銀は13年1月に政策協定(アコード)を締結。政府と日銀がマクロ経済政策に一体的に取り組む方針を明確化した。今回、連携を強め「日銀が事実上の財政ファイナンスに陥ったことで、近い将来の脱却は不可能だ」(日銀ウォッチャー)との声が出ている。
来年度、コロナ後の景気支援がテーマに
新型コロナの感染拡大による急速な景気悪化に対応して、政府は矢継ぎ早に補正予算を編成。2次補正も早期に国会で成立させ、執行に移したい考えだ。
ただ、景気の急激な落ち込みで税収が予想を大幅に下振れるのが不可避の情勢の中、今年度もさらなる補正予算が必要になるとみられている。さらに、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「来年度はコロナ後の景気回復を確かなものにすることが至上命題になり、歳出は緩みっぱなしにならざるを得ない。一方、税収の回復はおぼつかなく、消費減税の影もちらつく」と指摘。「日銀による国債の無制限購入は続くだろうし、長期金利のゼロ%目標も長引くのではないか」とみている。
東京・三田。22日夜。臨時の金融政策決定会合後、黒田東彦日銀総裁と麻生太郎財務相が会談した。会談後、両氏は共同談話を発表し、コロナ危機を乗り越えるために政府と日銀が一体となって取り組んでいく方針を示した。共同談話の発表は2016年6月、英国の欧州連合(EU)離脱問題で市場が動揺して以来のことだ。
会談後の会見で、麻生財務相は「中銀と政府が同じ方向を向いているのはすごく大事なことだ」と連携強化の意義を強調。会談する両氏の脇を、財務省の神田眞人総括審議官、日銀の内田眞一理事(企画担当)ら幹部が固めていた。