落語家・立川志ら乃のスーパーマーケット徒然草 第1回 私がスーパーマーケットに「恩返し」したい理由
ハーゲンダッツの「シチリアレモンパイ」で味わった謎の優越感
マルエツプチは「一の市」や「中の市」という名称で、特売の日を設けています。確かあれはとある「一の市」の日だった思いますが、「ハーゲンダッツ」の特売が行われておりました。食べたことはありますが、ハーゲンダッツを自分のお金で購入し、自宅で食べるという行為をしたことがなかったので、思い切って手に取ろうと売場に近づきました。しかし貧乏暮らしが染みついているので、「ハーゲンダッツはまだ早すぎないか?」としり込み。しばらく逡巡しましたが、
「40も過ぎたんだし、立川流の真打ちなんだし、ハーゲンダッツくらいいいだろ」
という理由で購入を決断。初めて購入の意思を持ち、積極的に対峙するハーゲンダッツ売場にわくわくが止まらなかったことを今でもよく覚えてます。
数種類あるフレーバーの中からまずは「ショコラ」を選ぶ。かみさんがチョコ好きなので、これは喜んでくれるだろうと思いながらカゴに入る。そして自分の分を選ぶため、他にはどんな種類があるのかと目をやるとそこに…「期間限定シチリアレモンパイ」となるフレーバーが。
「シチリアレモンパイ…シチリアレモンパイ…? なんだよシチリアレモンパイって!買うしかないでしょ!シチリアレモンパイ!声に出して言いたい日本語だもの、シチリアレモンパイ!」
「シチリアレモンパイでテンションが上がったランキング」があれば上位を伺えたであろうほどの高揚感でした。
それはさておき、その時のハーゲンダッツの値段は確か「236円」だったと記憶しております。相場は知りませんでしたが、スーパーの特売として売られているのだから、通常よりも安いのだろうと上機嫌で帰路。
しかし帰宅後早速ネットでハーゲンダッツの値段を調べちゃうのが私の貧乏臭いところ。すぐにネットの最安値とほぼ同じであることが判明し、「おいおい、マルエツプチもなかなかやるではないか」とどの目線からかわからない優越感を得た数日後に、冒頭の「あの日」がやって来るのです…。
(続く)
立川志ら乃
1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。
Twitter:@tatekawashirano
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