ドローンを市街地を含む有人地帯上空で飛ばせるようにする改正航空法が5日、施行される。これまで市街地では監視要員を配置した場合などに限り飛行が認められていたが、機体の安全性認証取得など条件付きで、監視要員なしでも飛行できるよう規制を緩和。物流を中心に人手不足が課題となる幅広い業種でドローン活用の本格化が期待され、関連企業各社は準備を進めている。
法改正で、市街地などの上空を操縦者が機体を目視できない状態で飛行することが可能となり、「レベル4」と呼ばれる。新設された機体認証や操縦資格取得のほか、運航ごとに安全対策などに関する国土交通相の許可・承認を事前に得る必要がある。
ドローンは現状、農薬散布やインフラ点検では活躍しているが、飛行範囲が市街地などに広がることで、物流をはじめ警備や空撮での利用拡大が期待される。インプレス総合研究所の「ドローンビジネス調査報告書2022」によると、ドローンを用いたサービスや機器などの市場規模は、2027年度に22年度見込み比2.6倍の約8000億円に拡大する見通し。
運輸大手のセイノーホールディングス(HD)は、ドローン開発会社エアロネクスト(東京)と連携し、山梨県や福井県の山間部で、住民向けにドローンを用いた食品などの配送サービスを提供している。ただ、現行法では有人地帯の上空を飛ばせず、河川上空などを迂回(うかい)する必要がある。このため「レベル4」解禁を「最短ルートを飛ばせるようになる」(セイノーHD担当者)と歓迎。配送サービスは当面、地方で行うが、今後は都市部での導入も目指すという。
航空大手もドローン活用に積極的だ。日本航空は23年度、ANAホールディングスは25年度に配送サービス開始を目指す。両社とも輸送手段が限られる国内の離島地域などで実証実験を重ねている。
国土交通省などによると、レベル4でのドローン飛行は、当初は地方の人口密度の低いエリアで、将来的には都市部での展開が見込まれている。
ただ、高層ビルの周辺で局所的に強風が吹いたり気流が乱れたりすることがある都市部での本格導入には、「さらなる機体性能の向上が必要」(業界関係者)とされる。同一空域を複数の機体が同時に飛行する場合に備えた運航管理システムも欠かせず、官民でのさらなる環境整備も求められる。
〔写真説明〕ANAホールディングスなどが配送実験で使用したドローン=鹿児島県瀬戸内町(同社提供)