連載・高倉照和のネットスーパー成功法則 #1 黒字化への道のり
センター型に見切りをつけ、店舗出荷型に転向
1990年、四日市市の「いくわ店」を皮切りに、センター型の出荷を店舗出荷型へ切り替え始めました。その結果、生鮮食品の売上高構成比が大幅にアップしました。
飲食店の馴染み客が出前の注文を入れるように、宅配サービスもあくまで店舗への信頼に基づいて利用されます。スーパーサンシの店舗を利用し慣れているお客さまだからこそ、宅配会員にも入会されるのです。
小売世界最大手のウォルマート(Walmart)は、2014年ごろからグローバル戦略に「Physical & Digital」の融合を掲げ、店舗とネット両方のチャネルで顧客のニーズを反映しています。今では店舗出荷型が主流になり、店舗に対抗するのではなく、「店舗を強化する」のが宅配サービスであるという発想は自明の理となっていますが、当時は大きな方向転換でした。
「リアル店舗プラスオン」の宅配という体制に落ち着くと、新規入会者は伸びずとも退会者が減少していきました。赤字が続くものの出血量が抑えられ、「宅配事業のコツがつかめた」状態になっていったのです。
ネットスーパー成功に通じたもう1つの大転機
スーパーサンシのネットスーパーには、もう1つ大転機があります。それは、インターネットの普及です。
インターネット黎明期を迎えた1995年、三井物産のEC事業プロジェクトとして、ショッピングモール「キュリオシティ」が立ち上がりました。同サービスは、CD-ROMに収録された電子カタログ閲覧とインターネット注文を連携したサービスでした。
当時は一般家庭へのネット回線普及率が3%以下と、まだほんの一部にしか使われていない時期で、世間の興味もそれほど強くありませんでした。私もネットショッピングが一般へ浸透するには難があるだろうと予想していました。
考えが変わったのは、1997年冬のある日のことです。大雪に降り込められ、出勤もできない状況だったので、自宅でISPサービス「BEKKOAME//INTERNET」を利用してインターネットに接続してみました。ポータルサイト「MSN」を開いてみると、じわじわとビル・ゲイツの画像を読み込み、彼の話す声が再生されていきます。これに私は大きな衝撃を受けました。
文字ベースの「パソコン通信」とは異なり、インターネットはお客さまにより多くの情報が伝えられるーー。新しいビジネスの可能性を感じてインターネットの研究を進めていると、同年5月にインターネットショッピングモールの「楽天市場」が開設されました。これにも刺激を受け、同年の8月ごろに自社ドメインを取得し、簡単なWebサイトを立ち上げたのです。
次回は2000年代以降、電話応答中心の宅配サービスがネットスーパーへ移り、黒字化を達成するまでをお話していきたいと思います。
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