ネットスーパー&宅配……加速する食のECシフト 成功の鍵は「配送」にあり!
「儲かる」ネットスーパーを構築するには
ただし、ネットスーパーを運営していくうえでは、「収益性」の問題は避けては通れない。
現状、国内のネットスーパーの多くは、単店で黒字などは一部見られるものの、事業全体で黒字の企業はひと握りであるといわれている。
注意したいのは、リアル店舗とネットスーパーでは利益を残す仕組みが異なるという点だ。リアル店舗のコストは、不動産費や減価償却費といった「固定費」が大部分を占めるため、客数が増えて売上が上がれば上がるほど、固定費比率が下がり、多くの利益を残すことができる。しかしネットスーパーの主なコストとなる配送費は「変動費」であり、受注件数が増えて売上が上がったとしても、多くの利益を残せるとは限らない。
国内のネットスーパーは、店舗の従業員がピックアップした商品を顧客が指定した場所まで配送する「店舗出荷型」が主流。そして、一部を除いたほとんどの企業が配送をサードパーティに委託している。こうしたモデルの場合、自社の努力だけで配送コストを低減させるのは難しい。
そこで考えられるアプローチの1つが、BOPIS(Buy Online Pick-up InStore:店舗受け取りサービス)の拡充だ。欧州では、テスコ(Tesco)をはじめ、かねてBOPISに投資してきた小売業がコロナ禍の中で成果をあげている。イオンリテールやイトーヨーカ堂など国内の大手小売も現在、ドライブスルーや専用ロッカー、サービスカウンター受け取りなど、さまざまな商品受け取り手段を拡大中だ。これらサービスを導入してきた背景には、顧客の利便性向上だけでなく、「配送コストを消費者に内在化させたい」というねらいもあると見ていいだろう。
大手を中心とした小売各社は現在、ネットスーパーサービスの受注キャパシティ、対象エリアの拡大に力を注いでいる。しかし前述のとおり、多くの企業が採用しているネットスーパーのビジネスモデルはスケールメリットが出にくいため、むやみに規模を拡大しても収益性は一向に上がらないままだ。今後、ネットスーパーを強化していく企業は、規模に関係なく、1店舗、あるいは小規模でも利益を確保可能な仕組みを構築していけるかが成功のカギとなりそうだ。
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本特集では、国内の大手小売からローカルスーパー、そして米国・欧州における有力小売のECの最新動向を、有識者の解説を交えながらまとめた。食のECシフトという大きな流れに対して、どのようなアクションを起こしていくか──。各事例にヒントが隠れているはずだ。
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