ネットスーパー&宅配……加速する食のECシフト 成功の鍵は「配送」にあり!
大手小売が続々とECを強化中
このように食のECシフトの今後にはさまざまな意見があるが、コロナ収束の兆しがいまだ見えないなかで、ネットスーパーに対するニーズが拡大しているのは間違いない。では、小売各社はネットスーパーを強化していくべきなのか。未実施のプレイヤーは新規にネットスーパーを開始するべきなのだろうか。
ここでも意見が分かれ、ローランド・ベルガーの福田氏は、「EC はあくまで『手段』の1つでしかない」とし、「すべてのSM企業がEC化をすすめる必要はない」と話す。福田氏は、食品小売業がEC強化を検討する際は、「バリュー・プロポジション(顧客に提供する価値)」を明確にするべきだと指摘する。たとえば、低価格を追求するディスカウンターであれば、安易にECに手を出すのではなく、サプライチェーンなど価格を下げるための投資をすすめていくべきだというのだ。
その一方、スーパーサンシの高倉氏は、前出の消費者の変化も踏まえたうえで「(ネットスーパーを)やらないという選択肢はない」と豪語する。
最近は、大手小売も続々とネットスーパーを強化している。本特集でケーススタディとして取り上げているイオンリテールはネットスーパーの受け取りサービスを拡充中で、イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)は20年7月末にネットスーパーを大幅にリニューアルし、課題としていた欠品問題を解消しつつある。SM最大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)はアマゾンジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)との協業によるネットスーパーサービスを展開中で、20年7月には大阪府の一部を対象エリアに加えた。
こうした大手の動きも踏まえ、「生鮮ECは、現時点ではドラッグストアもコンビニエンスストアも手を出せない、SM企業が“総取り”できる領域。ローカルスーパーがこの波に乗らないわけにはいかない」とスーパーサンシ高倉氏は話す。
いずれにせよ、小売各社は自社のビジネスモデルにネットスーパーがどう関係してくるかを検討する必要がありそうだ。