アングル:休憩室がコロナで一変、非接触コーヒーマシンも登場
[29日 ロイター] – 薄汚れた電子レンジや、ボタンが使い古され、べとつくコーヒーメーカーは過去の遺物。代わって米企業の職場の休憩室に次々と登場しているのは、タッチパネル用のペン、QRコード、非接触型ウオータークーラー、そしてコーヒーの種類を指示するモバイルアプリなどだ。
米国ではミシガン州の自動車大手フォード本社、ニューヨークの金融大手ゴールドマン・サックス本社から全米の運輸大手フェデックス拠点に至るまで、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンを終えて職場に戻った従業員らを新しい現実が出迎えている。社会的距離、在宅勤務と出勤のハイブリッド、そして厳しい衛生基準だ。
そうした中で、職場刷新の大きな部分を占めているのが、従業員がコーヒー片手に団らんし、社内のうわさ話などで過ごしていた休憩室。キューリグ・ドクターペッパー、ラバッツァ、ネスレといったコーヒー企業は、コロナ時代に合った休憩室向けの新技術を打ち出している。
ネスレの場合、製造業者と協力してコーヒーメーカーに新たな機能を加え、メニューに指をかざすだけで飲み物を選べるようにした。6月以降、顧客にそうした方式を提供している。
ラバッツァは9月、機械に触れずモバイルアプリでカプチーノやカフェラテを選べるコーヒーメーカーを導入。業務用コーヒー用品のバン(Bunn)は、機器にQRコードを装備し、インターネットのページから飲み物を注文できるようにした。
調査会社パッケージド・ファクツによると、職場用にコーヒー豆とコーヒーメーカーを供給するビジネスは昨年、米国だけで57億ドル(約6025億円)規模に達した。ロックダウンで業務用の売り上げが消滅していたコーヒー企業は今、コロナ時代の従業員や雇用主の不安に対応することで事業復活を目指している。
大急ぎでアプリ導入
ラバッツァは当初、5月の見本市で新たなコーヒーメーカーをお披露目する予定だったが、コロナ禍が襲った3月から非接触機能を加えるための設計変更に取り掛かった。ラバッツァ・プロフェッショナルズのバイスプレジデント、ブルース・ウィリアムソン氏は「数週間のうちに大急ぎでアプリを準備する必要があった」と語る。
ウィリアムソン氏によると、同社が8月、コーヒーを消費する米企業約170社を対象に行った調査では、従業員の40%が、飲み物を買いに職場から外出する回数が減り、以前より職場内での供給に頼るようになるだろうと予想。一方で感染リスクは心配だと答えた。
「職場には復帰するが機械に触るのは怖い、ということだ」
雇用主側やコーヒーなどの供給業者はまた、従業員が外出せずに職場内の1カ所で飲食品を補給できる「ワンストップ・サービス」の導入も試みている。在宅勤務者に対しても、自宅にいながらそうしたサービスが受けられる仕組みを提供している。
カプセル式コーヒーメーカーを提供するキューリグは今、社員食堂に代わって設計された社内生鮮売り場「ミニマート」向けにコーヒーを納入している。ミニマートではコーヒーの他、果物や野菜、乳製品、肉、その他の日用品が手に入る。
またキューリグ幹部によると、同社が契約を結んだ複数の会社は同社のコーヒーカプセルとコーヒーメーカーを業務上の必需品と認定し、在宅勤務者がこれらの宅配を注文した場合、会社が代金を支払う制度を取り入れた。
フォードは5月以降、世界全体の従業員19万人のうち10万人以上が職場復帰したが、社内カフェは閉鎖したままで、代わりに飲食品パッケージの提供を始めた。
ゴールドマン・サックスはロイターに対し、ニューヨークの従業員の15%が職場復帰したと説明した。自分の職場机以外の全エリアでのマスク着用義務化や、会議室や共有エリアの人数制限など、標準的な感染予防措置を導入した。
すべてを修正
通信大手ベライゾンや医療保険のユナイテッドヘルス・グループの社員食堂は、ビュッフェ方式やその場で料理人が注文に応じる形式から、出来合いの料理を携帯用に包装して並べる形式に切り替えた。
マイクロソフトは非接触型のコーヒーメーカーを導入。床材メーカーのモホーク・インダストリーズは冷蔵庫のドアをペダル開閉式にし、ナイフやフォークは個別包装のプラスチック製に切り替えた。
食品サービス企業キャンティーンの幹部、アリシア・ルブフ氏は、企業は従業員の職場復帰を見込んでいるが、復帰した職場はコロナ前と同じではないだろうと指摘。「われわれは、すべてを修正し、考え直す必要がある」と語った。