M&Aが機能しにくい日本のアパレル 商社がデジタル戦略の要になる理由
前回、日本のアパレル企業では、さまざまな理由からM&A(合併・買収)戦略は現実的にあまり有効ではないと書いた。その背景の1つとして考えられるのが、欧米の企業と比べてとくに「標準化」が進んでいない点である。M&A戦略が有効でないなら、日本のアパレルはどうすれば勝ち残ることができるのだろうか?
標準化を悪いものと考える日本の企業文化
「標準化」の対義語は、属人化であり個別化である。日本企業では、企業体企業、組織対組織、そして、個人対個人でも、独自のやり方があり、それぞれが、独自路線を歩むことを良いことだと考えているふしがある。よい言い方をすれば文化であり、悪い言い方をすれば「バラツキ」だ。
日本人は過去から今まで、ほぼ単一民族の島国国家だったため、「あ、うん」の呼吸や「忖度」が、人と人の距離感をつくってきた。これが日本の良さであったし、逆に、日本の問題を生み出してきた原因でもあった。
私は、日本企業と米国企業の両方に勤めた経験があるが、米国企業の業務「標準化」に対する強いこだわりと「バラツキ」に対する改善意識は半端ではない。某世界企業のデジタル戦略のビジョン構築プロジェクトに参加し、米国、アジア、欧州を周り、世界の支店や子会社の業務調査を実施した時のことである。日本と似た国は韓国ぐらいで、残りの国は業務フローがシンプルで合理的だったことに驚いた。日本と韓国を除く、欧米とアジア諸国の業務フィット率は70%を超え日本と韓国は30%以下だった。
日本企業が取るべきデジタル戦略とは
私は、無理に米国型の標準化した企業群のようにし、レゴブロックのようにくっつけたり離したりする方向性は日本では馴染まないと思う。
ではどうすれば良いかといえば、商社がその主役に立つのがもっとも効率的だと考えている。
例えば、企業のデジタル化についていえば、商社がデジタル投資をすべきである。日本では、いびつな産業構造の中で発展した「商社」という業態があり、この「商社」が多くの中小企業を束ね、いわば、歴史的に、日本全体をバーチャルシングルカンパニー(仮想的な巨大企業)のようにしてきたからだ。
この仕組みをわかりやすくいうと、「クラウド」という概念に近い。クラウドとは、いままで、個別企業の中に導入していたシステムをアナロジカル(類推的に)「雲の上」に置き、そのシステムが「返す情報」を共同で活用しようという考え方である。やや蛇足となるが、2020年以降は、「雲の上のデータ」をどのように活用し、アパレル企業が競争力を上げていくのかという勝負になってくる。