初任給上げ、学生に好待遇アピール=人材獲得、離職防止も意識
2024年春闘では、新卒初任給を大幅に引き上げる大手企業が相次いだ。企業がこぞって好待遇を学生にアピールする背景には、人材獲得競争の激化と、若年層の離職率の高さがある。
「若手層全体の報酬を引き上げている。選ばれるNECを目指す」。NECの堀川大介執行役CHRO(最高人事責任者)はこう話す。24年春闘では、大卒初任給を現行水準と比べ1万8900円増の28万円と回答。引き上げ額は労働組合の要求(1万1200円以上)を超え、7.2%増となる。
日本製鉄は大卒で26万5000円、高卒で21万円に初任給を改定すると回答。引き上げ率はそれぞれ18.3%、16.7%に上る。キリンホールディングスは大卒初任給を2万8000円引き上げて27万円にするとともに、若手社員には基本給を底上げするベースアップ(ベア)の実施額を組合員平均より高くする。
初任給では23年春に、「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングが総合職で30万円に引き上げ、話題を呼んだ。24年も採用活動の本格化を前に、伊藤忠商事や大和証券グループ本社など多くの企業が初任給アップを表明。コロナ禍からの業績回復で人材難に苦しむ旅行や外食業界にも動きは広がる。
企業は、優秀な人材の囲い込みと同時に離職防止も意識している。厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の3年以内の離職率は3割に上る。このため、若手の賃上げを手厚くする企業は増えている。
若手とは対照的に、中高年の賃金は近年伸び悩んでいる。厚労省の統計で男性の45~49歳の賃金が20~24歳と比べ何倍になっているかを見ると、22年は1.76倍。2倍を超えていた1995年と比べ、年齢が上がっても賃金は以前ほど上がらなくなっている。ある製造業大手の労組幹部は「40~50代は住宅ローンなど出費がかさむ。若年層の離職防止にも、賃金が上がり続ける安心感が必要だ」と指摘している。