博報堂が取り組む「テーマ型」リテールメディア、第一弾はフェムテック領域
博報堂(東京都/水島正幸社長)は、テレビ・デジタル広告から販促、売場強化まで、フルファネルで一気通貫したマーケティングサービスを強みとする。その中で同社はリテールメディア事業に他社に先駆けて取り組んできた。直近ではテーマ型のリテールメディアに注力する。
小売大手企業やキー局を巻き込む
博報堂はリテールメディアの領域において、約10年前からデジタルサイネージの広告枠の販売などを先進的に手掛けてきた。リテールメディアに関するコンサルティングやリテールメディアの立ち上げのプロデュースなど、さまざまなサービスを展開している。
近年、国内で小売企業のスマホアプリや店頭のデジタルサイネージといったデジタルの顧客接点が広がり、リテールメディアへの関心も高まっている。現時点では、リテールメディアの広告枠にメーカーらの広告主が広告を出稿する「広告モデル」が主流だ。売場に近いというリテールメディアの特性ゆえ、ポイントやクーポンといった販促面での活用に偏りがちな面もある。
博報堂は、生活者発想の体験デザインを得意とする総合代理店の強みを生かし、テーマ型リテールメディアに取り組んでいる。情報メディアとして信頼性が高く、影響力が大きいテレビ、インタラクティブなデジタルメディア、生活者が日常的に利用する小売チェーンの売場をフルファネルでつなぎ、社会的なテーマを掲げて生活者の認知や共感を獲得する。そのテーマに関連する商品を売場で購買するまでを一気通貫する総合的な体験設計が特徴だ。
初の取り組みとして、キー局のフジテレビジョン(東京都:以下、フジテレビ)、小売大手のイオンリテール(千葉県)、マツキヨココカラ&カンパニー(東京都:以下、マツキヨココカラ)と協業し、フェムテック(Femtech)に特化したテーマ型メディアを立ち上げた。
成長を続けているフェムテック市場
フェムテックとはFemale(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、月経や妊娠、不妊、産後、更年期といった女性のライフステージにおける健康課題をテクノロジーで解決する商品・サービスをいう。
女性特有の健康問題や心身の症状によって離職や昇進辞退、勤務形態の変更を余儀なくされていた女性がフェムテックを活用し、仕事との両立を実現することで得られる経済効果は年間2兆円超と推計され、女性の健康課題は社会全体で取り組むべき課題となっている。
国内のフェムテック市場は年々成長し、2019年時点の574億円から22年には約700億円に達している。しかし、セルフヘルスケア市場全体でみるとその割合はわずか1%程度とまだ小さい。イオンリテールやマツキヨココカラなど、フェムテックをテーマとした売場づくりに取り組む小売チェーンが現れつつあるものの、売場での露出や訴求には限界があり、生活者の認知や理解の獲得に十分つながっていないのが現状だ。
そこで、フジテレビは「女性の身体や健康、生きづらさなどを本音で語る」をテーマに、女性に寄り添うコンテンツを地上波とデジタルメディアのメディアミックスで届ける生活者参加型の番組を構想。23年4月にフェムテック番組企画のβ版として「トーキョー・ミモザ」を放送した後、23年11月から月1回のレギュラー番組「トーキョーツキイチMTG」を第3土曜日深夜に放送している。
「トーキョーツキイチMTG」は、視聴者と双方向でコミュニケーションできる番組設計となっている。番組で採り上げて欲しいテーマを公式インスタグラムやウェブサイトで視聴者から募集し、女性タレントやインフルエンサーが本音で語り合う番組を地上波で放送。公式YouTubeでは未放送シーンやおすすめ商品の紹介など、番組と連動した動画コンテンツを配信している。
「卵子凍結」をテーマとした第一回目の世帯視聴率は0.9%で、想定値の1%に近い結果が出た。メインターゲット層である35歳以上女性の視聴率が特に高く、視聴者数ベースではティーン層も一定の割合を獲得できている。
SNSでは「普段聞けない話もあって面白かった」、「引き続き観ようと思った番組。知識を得ておくことは必要」など、視聴者からポジティブな反響がみられた。
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