アメリカ小売業トップ10社ランキングに見る、大手企業の最新動向!
長く続いたコロナ禍もついに終焉を迎え、世界的にコロナ前の日常を取り戻しつつある今日。一方で小売企業は、コロナ特需の反動や激しいインフレといった新たな逆風下にさらされている。そうしたなかで米大手小売企業はどのような成長戦略を描いているのか。ユーロモニターによる最新販売額ランキングに入った上位10社にフォーカスして考察する。※1ドル=135円換算 販売額はユーロモニターのデータをもとに算出
2022年の小売販売総額は約554兆円!
2022年の米国小売(自動車、ガソリン等の燃料を除く)の市場規模は、対前年比5.3%増の4兆1047億ドル(約554兆円)となっており、17年から22年までの過去5年間の年平均成長率は6.0%で推移している。
販売額ランキングのうち、まずトップ5に入ったのはウォルマート(Walmart)、アマゾン(Amazon.com)、CVSヘルス(CVS health)、クローガー(Kroger)、コストコ・ホールセール(Costco Wholesale)。昨年と比較して上位4社の顔ぶれに変化はないが、コストコが昨年の6位から順位を1つ上げトップ5に食い込んだ。
6~10位は、ターゲット(Target)、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance)、アップル(Apple)、ホームデポ(Home Depot)、アルバートソンズ(Albertsons)の順。多少の順位変動はあったが、ラインアップは昨年と変わりはない。
上位10社の中ではウォルグリーンのみが昨年から販売額を減少させており、順位も5位から7位にダウンしている。ただし概して、上位企業は前年と比較しても、過去5年間の推移を見ても、堅調な成長を示している。
テクノロジー投資加速するウォルマート、リアル店舗の”選択と集中”進めるアマゾン
今回もトップを維持した世界最大の小売業であるウォルマート。最新の22年の販売額4911億ドルで、前年から7.1%増、コロナ前の17年からの過去5年間で見ても6.0%増と力強い成長を示した。22年度末時点の店舗数は店舗数は米国と海外でそれぞれ約5300店舗となっており、同社は新規出店よりも既存店活性化に注力する姿勢を見せている。
実店舗以上に投資を強化しているのが、EC、テクノロジー、サプライチェーンの領域だ。AIやロボティクスなどによる”自動化”の取り組みを軸としたサプライチェーンの効率化を進めるほか、ECシステムや即時配送インフラ、デジタル広告を外販することで新たな収益の柱を築きつつある。
ここ数年、このウォルマートの牙城に迫りつつあるのが、ECの巨人・アマゾンだ。コロナ禍での巣ごもり需要をとらえて大きな成長を示した同社だが、最新の販売額の伸び率はその反動を受けやや鈍化。最新決算(22年度)ではおよそ10年ぶりに最終赤字を計上するなど振るわない。
そうしたなかで同社はさまざまな事業領域でリストラを進めており、なかでも注目を集めているのがリアル店舗の”選択と集中”だ。昨年初頭にはアマゾンブックス(Amazon Books)、アマゾン4スター(Amazon 4-star)、ポップアップを閉店し、アマゾンフレッシュストア(Amazon Fresh Store)、アマゾンゴー(Amazon Go)、アマゾンスタイル(Amazon Style)の3つにほぼ集約している。
他方、22年には初期医療サービスを提供するワンメディカル(One Medical)を買収したことで、約200カ所のクリニックを手中に収めている。リアル店舗という文脈でも、アマゾン全体の経営戦略で見ても、ヘルスケア領域への進出は特筆すべき動きである。
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