アパレルビジネスをコントロールするための4つの超重要指標とは!?

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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アパレル業界の実務にどっぷりと浸かり、日々の予実管理(予算と実績管理)まで数字で細かくみてゆくハンズオン型の仕事をしていると、時々、信じられないようなことを言う人に出会う時がある。いわゆる評論家やコンサルに多いのだが、彼らが言う「信じられないようなこと」の典型が「プロパー消化率など関係ない」という発言だ。これでは、どんぶり勘定を推奨しているようなものだが、果たして一理でもあるのだろうか?アパレルの実務に則って、この発言の愚を明らかにしよう。

Photo by bee32
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交差比率は、一定の条件のもとでは不要になる

 「プロパー消化率なんて関係ない」と豪語している人たちに私は問いたい。「期中で、プロパー消化率が50%で推移しているケースと、プロパー消化率が70%で推移している場合、それぞれ何をすればよいか」と。

  この質問に即答できる評論家が果たしてどれだけいるだろうか?

 答えは「それは、オフ率次第だ」。

 簡単に解説すると、オフ率(値引き率)が低ければ定価販売に近くなるため、消化より原価低減の方が収益はあがるし、オフ率がやたら大きい場合は原価低減などの影響度は低くなり、むしろプロパー消化率向上が収益化のカギになる。よく考えれば誰でもわかる理屈だ。そもそも、投入数量が少なければプロパー消化率は上がるため、これを唯一指標にしてしまうと売上がどんどん下がる。妥当な売上計画とセットで検討しなければならないこともMDの基本である。

  例えば、私は交差比率(商品回転率 × 粗利率)という古典的なKPI(重要業績評価指標)でさえ、一定の条件が揃えば不要だと思っている。実際、私はリーシング会社に、アパレルが直接貿易を増やした場合のキャッシュフロー悪化をファイナンスすることで、在庫を流動化するサービスを企画したことがある。日通などは、他業界にロジスティクスファイナンスというサービスで実際にやっている。これを、仮に年商1500億円ぐらいのアパレルが導入すると、営業利益率と同額程度のフリーキャッシュフローが生まれ、連載第2回で語った「長期販売」による売り切りが可能となる。ZARAのような高速回転型のビジネスモデルを構築できない場合、「時間」と「高品質」のかけ算が差別化要因となり、ZARAの真似などしなくとも、冒頭のようなファイナンスを商社やリーシング会社と組み立てることができれば、金利の低い今、商品回転率は無意味な指標となる。

 ましてや、今はMDミックスの時代だ。例えば、家具や下着などは在庫償却までに3年かけて売り切っている会社もあるし、雑貨となると、中には5年という長期販売が普通だ。こうしたMDミックスが進化すれば一律期間の在庫評価は自分のクビをしめる結果となる。

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アパレルビジネスをコントロールするための、4つの重要指標!

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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