角井亮一氏が解説!「ネットスーパーは商圏を実店舗より狭く、既存顧客向けにすべき」理由とは
新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大下で食のEC化が進むなか、ネットスーパーを巡る競争環境は大きく変化している。大手小売業は積極投資に動くほか、受注から数十分で商品を配送するクイックコマース(Qコマース)といった新規プレーヤーも食品宅配市場に続々と参入している。こうしたなか今、食品スーパー(SM)各社はいかに戦っていくべきか。物流の観点から押さえるべきポイントを解説する。
コロナ禍で薄まる配送料への抵抗感
コロナ禍で食のEC化が進んでいる。経済産業省が発表した2020年度「電子商取引に関する市場調査」によると、「食品、飲料、酒類」分野のB to C(企業から個人向け)のEC市場規模は、対前年度比21.1%増の2兆2086億円。絶対額としてはまだ小さいものの大きな伸長率を見せ、EC化率は同0.4ポイント増の3.3%に上昇した。
こうしたなかネットスーパーの利用も拡大した。大手チェーンのなかには売上を倍増させたところもあり、利用に至るまでのハードルの1つといえる配送料に対する生活者の抵抗感も以前より薄まったのではないだろうか。
しかしながら、単にネットスーパーに参入すればSM各社の将来がバラ色になるかといえば、決してそうではないだろう。人口減や少子高齢化が進むことに変わりはなく、商圏内の市場規模縮小は避けられないからだ。
また、食品宅配市場を巡る競争が激化していることもある。コロナ禍では、生協宅配やオイシックス・ラ・大地(東京都)のように、産直野菜など独自商品を強みとする定期食品宅配事業者も好調だった。アマゾンジャパン(東京都)をはじめとした大手は積極投資に動くほか、新規プレーヤーも続々と参入している。
こうした環境下でSM各社が取り組むべき課題は、本腰を入れてネットスーパーを事業として確立させることだと考える。食品の買物においてもEC化が進むなか、日常の食材の購入もECに流れていく消費者は少なくないだろう。そうなればSMの実店舗が今と同じくらいの優位性を保てるとは考えにくい。今後、新規出店をはじめとした成長戦略、それに伴う物流戦略を構築する際には、まずは自社にとってのネットスーパーの位置づけを明確にし、そのうえで行う必要があるだろう。
アマゾンも苦戦する市場、大型投資の成否は不透明
では、SM各社はどのようにネットスーパーを展開していくべきなのか。
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