第1回「今の学生は仕事を放棄し、無断欠勤し、母親に泣きつく」

神南文弥(じんなん ぶんや)
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 今回の問題点と解決策は以下の3つ

 ここまでの話は、私が16年夏に社長から聞いたものだ。トラブルは、学生が休憩をしていた時に、社長が注意したところから始まった。もしかすると、その前から何かがあったのかもしれない。学生が住むマンションでの話し合いが、さらに問題を引き起こした。実際のところ、室内で何が行われたのかは2人にしかわからないだろう。いかに弁護士とはいえ、内容証明郵便の内容が事実かどうかを正確に判断するのは、難しいかもしれない。

 しかし、この事例から学ぶ教訓はある。私が考えるものを以下に挙げたい。

問題点1 職場で従業員のマネジメントについて共有することができていない 

 休憩について社長と店長やフロアマネージャーとの間で認識の差が多少なりともあった可能性がある。それ以外にも従業員の育成などをめぐり、意見の違いなどがあったとも考えられる。だが、特に従業員の採用や育成、さらに賃金や労働時間は深く話し合い、経営幹部間でコンセンサスを確実なものにしておきたい。このあたりは、何かとトラブルになりやすい。

問題点2 店長やフロアマネジャーに任せることができていない

 チェーン店の社長がわざわざ、学生アルバイトにここまでの行動をとるのは珍しい。本来、アルバイトへの指導は、店長やフロアマネージャーがするべきではないか。社長のところに様々な権限や権力が集中し、店長やフロアマネジャーにはさしたる権限が与えられていないのかもしれない。

 これが事実ならば組織の態勢としては、未熟と言わざるを得ない。社長は各店舗の店長から随時、報告を受けるルートをつくり、少々の問題があったとしても、基本的には店長の判断に任せるべきだ。そのようなことをしていないから、今回のトラブルに至ったとも言える。

問題点3 話し合いは「例外なく、職場で、2人以上の管理職が参加」するかたちで行う

 アルバイトや正社員であれ、従業員と話し合いをするときは、「例外なく、職場で、2人以上の管理職が参加する」というルールをつくり、全店舗で共有するべきだ。社長が、学生の住むマンションに行くのはやはり、問題がある。しかも、11の話し合いでは「言った、言わない」の泥仕合になりかねない。

 店長とフロアマネジャーが店舗内で学生と話し合いをして、解決を図るべきだった。学生に説明した後で、双方のやりとりを録音することを検討してもいい。音声ファイルは、後々に中身を加工することが技術的には可能である。ただし、本来は同じ職場で、同じ志を持つ仲間なのだから証拠を残そうとする行為はできるだけなくしたい。

 

 

 

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

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