特別対談 2023年の明暗を分けるのは顧客とのつながり方
2022年はデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目された年だった。多くの企業のDX事業を支援する「顧客時間」の共同CEOで、オイシックス・ラ・大地の専門役員COCO(最高オムニチャネル責任者)も務める奥谷孝司氏と、ノーコードアプリプラットフォームを提供する「ヤプリ」のエグゼクティブ・スペシャリストの伴大二郎氏に、昨年のリテール企業のDXの取り組みを振り返るとともに、今年の動向を占ってもらった。
奥谷 孝司(顧客時間共同CEO)× 伴 大二郎(ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト)
D2Cは顧客の価値観を変える
──2022年のリテール業界のDXの取り組みを振り返るといかがでしたか。
奥谷:この数年はコロナ禍の影響で、どこもECの売上が伸びたが、22年はECが踊り場に入って、社会全体もあらためてリアル店舗の価値を感じて動きはじめた。そうなると、今年はオムニチャネル(リアル店舗やECサイトなどのあらゆる販売チャネルを活用して顧客と接点を持ち、アプローチする販売戦略)を強化している企業が伸びるのではないか。ますますECとリアル店舗をつなげることへの取り組みが重要になるだろう。
伴:本来であれば、22年はDXからサステナビリティに移る年だった。企業もDXの中にサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を入れていかなければならないと考えていたと思う。しかし、景気悪化やインフレの問題が出てきて、SXが行き場を失った。
消費者もサステナビリティは気になるが、価格により敏感になっている。たぶん、今後数年はこういう状況が続くのではないか。
──DXとSXにはどんな関係があるのですか。
伴:サステナビリティをビジネスに取り込むときに、いちばんの課題は消費者の意識や知識の不足だ。サステナビリティに対する意識が高ければ、当然、消費者はそれに配慮した商品を買う。消費者教育について考えると、企業が顧客の意識を上げていくのが最適だろう。SNSやアプリなどを通して、D2C(企業が製品を消費者に直接販売する販売方式)でサステナビリティやオーガニックなどの商品の選び方の情報を伝えていくべきだ。D2Cには顧客の価値観を変える力がある。
──オムニチャネルとサステナビリティは、全然違うテーマに見えますが、ともに顧客接点という点でつながっているのですね。
奥谷:マーケティングに求められる考え方として、モノからコトと言われて久しいが、これからはコトからさらに次のモノを考える時代になるのではないか。そうなると、モノにどうやって意味づけしていくかが重要になる。顧客がその意味合いを理解するためには企業の真の目的である顧客の課題の解決方法とその体験への態度表明が必要だ。企業がこうありたいというコト、つまり顧客のメリットと提供価値を示して、だからこういうモノを売っていくと伝えていく。購買における検討、購入、使用・消費という一連の流れである「顧客時間」に、企業が伴走していくことが重要になる。
注目を集めるリテールメディア
──多くの日本人が海外に行けない状況が長く続いたなかで、伴さんは頻繁に海外に行かれています。ここ数年でとくに注目している海外の企業はどこですか。
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