話題の新駅「高輪ゲートウェイ駅」にAI無人決済店舗「TOUCH TO GO」が誕生!アマゾン・ゴーにはない利便性とは?
「専用アプリが不要」という圧倒的な利便性
全体的な利用フローは、米アマゾンの「アマゾン・ゴー」に似たものと言えるだろう。しかしTOUCH TO GOの場合、「交通系ICカードをスキャナーにかざす」というプロセスが存在する。そのため厳密には、アマゾン・ゴーが掲げるような「Just Walk Out(商品をとってそのまま退店できる)」という買物体験を得られるわけではない。
一方で、TOUCH TO GOならではの利便性もある。それはアプリをあらかじめダウンロードする必要がない点だ。アマゾン・ゴーや、中国で一時期増殖したいわゆる「無人店舗」では専用アプリが必須で、アプリの画面上に表示されたバーコードをかざして入店、精算は店を出ると同時にアプリ上で完結するという仕組みが一般的だ。商品を手に取って出るだけ、という圧倒的な利便性と斬新な買物体験は得られるものの、アプリをダウンロードしてクレジットカードや銀行口座を登録するという手間があるほか、そもそもスマートフォンを持っていない、あるいは信用上の問題などでクレジットカードを所有できない消費者は“門前払い”されることになる。
しかしTOUCH TO GOは交通系ICカードを持っていれば誰でも利用できる。JR東日本の関係者によると「首都圏のJR利用客の9割方はICカードで改札を通過している」とされ、そこから考えるとTOUCH TO GOの利用ハードルは低いと言えるだろう。お客の利便性という部分にフォーカスすればこの点は大きなポイントだ。
月額制のサブスクリプションモデルで外販も予定
TOUCH TO GOを運営するのは、JR東日本グループのオープンイノベーション拠点であるJR東日本スタートアップ(東京都/柴田裕社長)と、AIを活用したイノベーション事業を展開するIT企業のサインポスト(東京都/蒲原寧社長)の2社が設立した合弁企業TOUCH TO GO(東京都/阿久津智紀社長)だ。
JR東日本スタートアップとサインポストによるAI無人決済店舗の実験は17年11月にJR大宮駅(埼玉県さいたま市)で、18年10月から12月にかけてJR赤羽駅(東京都北区)でそれぞれ行われており、それらの取り組みが高輪ゲートウェイ駅のTOUCH TO GOの店づくりのベースになっている。
TOUCH TO GOの阿久津社長は、「将来的にはJR東日本グループが展開する小売店や、人材不足に悩む飲食店や地方の小規模小売店などにシステムを提供していきたい」と話す。具体的には月額約80万円~のサブスクリプションモデルで、システムの外販に乗り出す考えだ。
ただ、現状のTOUCH TO GOもまだ完成形に至っているとは言えない。スペック上は一度に入れる人数に制限はないものの、実際には1カ所に多くの人が集まったりした場合、手に取った商品を認識できないケースも想定されるという。また、各商品の消費期限はバックヤードのスタッフが目視で管理しており、万一お客が期限切れの商品を購入しようとした場合、決済ディスプレー上でエラーが通知され、お客自身が売場に戻って商品を取り替える必要があるなど課題も残る。さらに品揃えについても実際の利用動向を分析しながらブラッシュアップしていかなければならない。
このように解決すべき課題はいくつかあるものの、完全キャッシュレスかつウォークスルー型の小売店舗が一般営業しているケースは未だ“希少”な存在だ。その意味でTOUCH TO GOはどのような顧客層にどのように利用されるのか、最適な商品構成はどういったものなのかなど、注目すべきポイントは数多あるだろう。
■店舗概要
開業日:2020年3月23日
所在地:JR山手線・京浜東北線「高輪ゲートウェイ」駅構内
営業時間:6:00~24:00
アイテム数:約600