「あらゆるプロセスにおけるデジタル化」進めるダイエーのDX戦略と成果とは
「iAEON」導入でロイヤルティ高める
同じく「顧客接点の強化」という観点から、22年9月にはイオングループの統合アプリ「iAEON(アイイオン)」を導入した。ダイエー公式アプリは24年2月末をもって終了する。
アプリの切り替えに当たり、当初顧客のうち一定数を占めるシニア世代の離脱を心配する声もあった。それでも導入に踏み切れたのは、数年前にプラスチックのポイントカードを廃止し、ダイエー公式アプリを導入した経験があったためだ。
廃止した当時、ポイントプログラムを引き続き使いたいと、わざわざスマートフォンに切り替えたという声がシニアの顧客から多く寄せられたのだ。「お得な要素をしっかり提供すれば、サービスが変わってもお客さまは当社を利用し続けてくださる」と、iAEONの導入背景を伊藤氏は振り返る。
導入から1年半が経過し、ダイエーをお気に入り登録している会員数は約100万人を超え、イオングループ内で最も多い数となっている。また、アプリ利用者は非利用者より単価が500円程度高く、ロイヤルティが高まる効果が出ている。
ここまで利用促進できた大きな要因は独自のポイント還元プログラムにある。iAEONでは、必要なダウンロード数やお気に入り登録件数を先に定め、達成に向けた施策を検討。月間の合計買上金額に応じてポイントを付与するプログラムをつくった。
プログラムは全5段階に分かれており、2万円以上で1.5%、3万円以上は1.6%……と上がっていき、最高段階は10万円以上で10%のポイントが付与される。最大10%という還元率の高さもあってか、広告を打たずとも、利用者数は自然と伸びていったという。
発注予測データを活用し仕入れの最適化へ
ダイエーで今後、DX推進においてとくに力を入れる予定なのが「データ活用と売場での情報発信」だ。とくにデータ活用は「購買データ以外で使えていないものを生かしていきたい」と伊藤氏は話す。
その1つが発注データだ。AIによる在庫の予測技術が進んだことで、商品の発注数は前もって予測が立てられるようになった。その予測データをサプライチェーンの上流に当たるメーカーや製造子会社に前もって共有することで、必要以上の仕入れを防ぎ、サプライチェーン全体で食品ロスの削減につなげたいと考えている。すでに導入準備を行っている段階だ。
売場での情報提供も、時代に合わせて変化させる考えだ。これまではSNSなどで発信する動画を外注していたが、より売場の実態を知る人間が情報発信を行うべく、自社社員2人で動画制作を行うかたちへと切り替えた。
今後は店頭へのデジタルサイネージの導入も進め、自分たちで制作した動画だけでなく、メーカーの商品の宣伝を流すことも検討している。「かつては、テレビCM、新聞チラシ、店頭ポップがダイエーの広告手段の常道だった。
今後はiAEON、サイネージ、電子棚札に置き換え、それぞれの顧客が必要としている情報を提供できるように変えていきたい」(伊藤氏)。売場、商品購入、販促に至るまで、ダイエーが掲げる「あらゆるプロセスにおけるデジタル化」は、着実に駒を進めている。
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