展示スペースを拡大し流通小売業に対する“本気度”見せるパナソニックの「現場プロセスイノベーション」 JDAとの提携による業務改革ソリューションも展示=リテールテック2019レポート
現場プロセスイノベーション
東京ビッグサイト(東京・有明)で3月5~8日に開催された「リテールテックJapan2019」のパナソニックブースでは、「現場プロセスイノベーション」をテーマに、「現場間を横断したデータ連携によるプロセス改善」「倉庫や店舗といったサプライチェーンの各現場の作業効率化」をテーマに関連するソリューションを紹介した。
今回は倉庫作業の実演スペースなども確保し、前回の12小間分のスペースから40小間分に拡大した。40小間に拡大したことで流通小売業に向けてパナソニックの“本気度”を強烈にアピールする狙いがある。日本の産業界全般がそうであるように、流通小売業でも人手不足が大きな問題となっており、その対策としてのIT活用=デジタルトランスフォーメーションが注目されている。もちろん来場者の関心も省力化に集まる。
見える化データ活用ゾーン
「リテールテックJapan2019」のパナソニックブースは、「見える化データ活用ゾーン」でセンシング技術やITソリューションを活用し、データ連携によるプロセス改善を提案している。パナソニックは、今年1月にJDAソフトウェアグループと共同開発に関する覚書を締結したことを発表した。これにより、パナソニックが家電をはじめとして電子・電気製品の製造販売で長年蓄積してきたノウハウや技術力と、JDAがもつ一連のプロセスイノベーション手法を組み合わせて、データを見える化し製造から物流、販売まで一貫した業務改革ソリューションを提供していく考えだ。
つまり製造業、流通小売業に向けて、課題解決となる“お役立ち”を提供していくというわけだ。すでに1月に開催された世界最大級の流通専門展示会(NRF)でも、パナソニックブースでは協業によるソリューションを紹介した。
「見える化データ活用ゾーン」で、JDAとの協業でもたらされるデータ連携によるプロセス改革を提案。POSシステムと連動した価格の自動更新やNFCを内蔵し新たな顧客サービスの展開に役立つ電子棚札ソリューション、店頭での欠品を検知し倉庫や工場にリアルタイムに情報伝達することで製造や配送の優先順位を最適化する欠品検知システム、顧客の動線情報をもとに店舗レイアウトなどを最適化できる行動分析システム、さらに同時に開催されている「セキュリティショー2019」でも紹介されている顔認証ソリューション「KPAS」も展示。
この顔認証ソリューションは、来店客の特定や属性の識別などにも活用することで接客品質の向上をはじめ顧客満足度向上にも生かすことができるだろう。また、「リテールテックJapan2019」での流通小売業向けのソリューション紹介とともに、同時に開催されていた「セキュリティショー2019」でもオフィスの入退室管理向けなどに紹介されており、流通小売業でも本部オフィス用や店舗のバックオフィスの入退室管理用にも使えるだろう。さらに配送見える化ソリューション、倉庫見える化ソリューションなどは小規模なデモシステムを交えて説明しており、来場者にもわかりやすい展示となっていた。
自動化・作業支援ゾーン
広いスペースを活用し実際の作業を再現して来場者の注目を浴びていたのが「自動化・作業支援ゾーン」。荷物仕分け支援システムの展示は、倉庫を模して荷物の仕分け作業を行うとともにプロジェクションマッピングを活用して日本語に不慣れな外国人労働者や未習熟者でも直感的に仕分けができるように工夫してある。
また、自動搬送システムを紹介するスペースでも、実際の倉庫のようにAGV(自動搬送台車)を動かして荷物の移動の実演を行っている。このAGVは自律走行型のロボット機能を搭載するとともに、ロールボックスパレットの搬送に適した低床型となっている。スムーズで迅速な荷物の移動をデモンストレーションで見せていた。
さらに厨房自動化ソリューションでは、中国の有名な火鍋レストランチェーン「海底撈」に昨年秋に導入されたのと同じロボットによる食材の搬出システムを展示。ロボット自体はパナソニックでは開発販売していないため他社製だが、そうしたパートナーの商材を組み合わせてユーザーニーズに応じたソリューションを提供できるのも、パナソニックの「現場プロセスイノベーション」の強みだとアピールしていた。
パナソニックは今年1月、社内カンパニーのコネクティッドソリューションズ社に「現場プロセス本部」を新設した。ITやロボットを活用して製造・小売・物流などで「現場プロセスイノベーション」を起こすのが新組織のミッションだという。流通小売業をはじめとして、多くの産業が直面している人手不足や生産性のさらなる向上といった課題の解決に直結するソリューションを「リテールテックJapan2019」に持ち込んだ。
“表の競争力”と“裏の競争力”
展示の主力もPOSやマルチ決済端末といったような顧客サービス向上に直結する従来のパナソニックブースとは異なる。デモを交えた展示に多くの来場者が見入っており、説明担当者の話を聞く姿が見られた。
それは、「店舗ソリューションのように“表の競争力”とバックヤードの業務改革を図る“裏の競争力”がある。“裏の競争力”を発揮することは、結果的に“表の競争力”を高めることになる」と担当者が話すように、これまで後回しにされがちだったバックヤードの業務効率改善を進めることで時間を捻出し、その時間を店頭接客に割り当てることで“表の競争力”の向上につながるからだ。つまり“裏の競争力”を高めることは、イコール“表の競争力”を高めることになる、というわけだ。
JDAとの協業の一環でさまざまな分析ノウハウも導入した。人手不足と言いながら、詳細にデータを分析してみると実は時間の使い方が間違っていることもあるとし、パナソニックではそうしたコンサルティングもビジネス化して力を入れていく考えだ。