小売の店舗やアプリが広告媒体に!リテールメディア、収益化の手法と課題とは
大手主導で進む店舗のメディア化
こうした背景のもと、近年は大手を中心とした国内小売もリテールメディアに本腰を上げ始めている。ただ、日本におけるリテールメディアは、ドラッグストアや家電量販店などの業態が先行しており、食品小売業の事例はまだ少ないのが現状だ。
本特集では、リテールメディアに取り組む国内食品小売の先進事例として、トライアルカンパニー(福岡県/石橋亮太社長:以下、トライアル)とファミリーマート(東京都/細見研介社長)を取材している。両社に共通しているのは、店頭にデジタルサイネージを配置することで広告面とする“店舗のメディア化”に取り組んでいる点だ。
トライアルでは、全店舗の約3分の1となる約90店舗を、最新技術を結集した「スマートストア」として営業しており、店内に配置したデジタルサイネージやスマートショッピングカートで広告を配信する。ファミリーマートは全国3000店舗へデジタルサイネージ「FamilyMartVision」の設置を完了し、商品・サービスの広告やエンタメ情報などの映像コンテンツを配信中だ。
“店舗のメディア化”の最大の強みは、買物中のお客に直接アプローチできるという点である。その訴求効果は大きく、サイネージ設置店舗では非設置店舗と比べて対象商品の売上が大きく伸長するというデータも得られている。

ただ、こうした取り組みを行えるのは、投資体力のある一部の企業に限られる。ファミリーマートはもちろん、トライアルも今や売上高6000億円に迫る大手チェーンだ。デジタルサイネージの価格は以前よりも下がってきているとはいえ、中堅以下の小売が同じように売場のメディア化を推進していくのは難しい。それはスマホアプリやネットスーパーについても同様のことがいえ、そうしたメディアを個社で構築していくには高いハードルがある。
そうした状況を打破すべく、近年は小売業のリテールメディア構築を支援するプレーヤーも現れている。本特集では、食品卸や広告代理店、デジタルプラットフォーマーなどリテールメディアに商機を見出した非小売のプレーヤーも取材している。市場が成熟する前に主導権を握らんとさまざまなプレーヤーが入り乱れ、リテールメディアは混戦の様相だ。
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