大阪・寝屋川でロピア・平和堂眼前にバローが出店!超激戦区で「競合対策はしない」理由

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

バロー(岐阜県/森克幸社長)は7月4日、大阪府寝屋川市に「スーパーマーケットバロー香里園店」(以下、香里園店)をオープンした。同店周辺はロピア(神奈川県)の関西1号店、平和堂(滋賀県)の総合スーパー(GMS)が並ぶ、関西エリアでも屈指の激戦区だ。厳しい環境下でバローが打ち出したのは「あえて競合対策はしない」という姿勢。どのように競争を勝ち抜くのか。

バローは7月4日、大阪府寝屋川市に「スーパーマーケットバロー香里園店」をオープン
バローは7月4日、大阪府寝屋川市に「スーパーマーケットバロー香里園店」をオープン

関西圏での売上高1000億円超めざし積極出店!

 バロー親会社のバローホールディングス(岐阜県/小池孝幸社長:以下、バローHD)は、2024~26年度の中期経営計画の中で、「関西圏での売上高1000億円超」という数値目標を掲げている。同社は10年に関西に進出し、25年8月末時点で、関西4府県で合計147店舗(滋賀31、京都21、大阪51、兵庫44)を展開する。中期経営計画では「滋賀県を除く関西エリアで、今後10年間で1%のシェア=2500億円の売上高をめざす」という意欲的な目標も示している。

 関西戦略の要として位置づけられているのが「スーパーマーケットバロー」の出店強化だ。現在、関西圏(滋賀県を除く)に12店舗の「スーパーマーケットバロー」を展開しており、その最新店舗が香里園店である。

バローHDの「競合を意識しない勝ち方」とは

 香里園店は、京阪本線「香里園」駅から南西へ約1.2kmの場所にある。パチンコ店の跡地に出店した、フリースタンディングの新設店だ。店舗は国道170号線沿いにあり、真隣にロピア関西1号店、かつ関西屈指の繁盛店とされる「ロピア 寝屋川島忠ホームズ店」、もう1つ隣には平和堂が運営するGMS「アル・プラザ香里園」が店を構える。バローの出店により、全国的にも知名度の高い有力チェーンが3軒横並びとなる、関西屈指の激戦区となった。

香里園店の鈴木雅之店長
香里園店の鈴木雅之店長

 では、このような環境下で香里園はどのように成長していこうとしているのか。香里園店の運営を担うのは、バローの大型繁盛店「スーパーマーケットバロー高辻店」(愛知県名古屋市)の店長を務めていた鈴木雅之氏だ。ロピア・平和堂と至近で競合する超激戦区への新規出店にあたり、オープンの数カ月前から、商圏・競合店調査を行ったという。数々の調査の末、鈴木店長がたどり着いたのは、「競合対策をしない」という結論だ。「ロピアさんや平和堂さんと同じ土俵に乗っても勝ち目はない。バローらしい“圧倒的な武器”を生かす方に勝機があると考えた」(鈴木店長)。

 バローは近年、「D・S(デスティネーションストア)」戦略に基づいた売場づくりを推進している。同戦略は、生鮮食品、プライベートブランド(PB)を強化し、競合店を飛び越えて来店してもらえるような“来店目的性”を追求するものだ。香里園店でもこれまでのD・S戦略に基づいて行ってきた取り組みを売場の随所で行っている。

 鈴木店長は「今のご時世、手間暇がかかり人件費がかさむ取り組みはどうしても敬遠されがちだ。だからこそ、あえて人手や費用をかけることで差別化を図っていく」と話す。その言葉のとおり、香里園店の売場ではあえて人手をかけた商品提案が随所にみられた。

 その一例が、青果売場で展開する生フルーツを店内で加工した「八百屋の生フルーツデザート」だ。売場では「フルーツタルト3P」(1080円)や「八百屋の生フルーツスフレケーキ」(3個1080円)などを販売。この取り組みは、24年11月から新店を中心に横展開されてきたものだ。人手はかかるものの、既存店では同商品を目当てに来店するお客が多く、売上も好調だという。

生フルーツを店内で加工した「八百屋の生フルーツデザート」
生フルーツを店内で加工した「八百屋の生フルーツデザート」

 精肉売場でも人手をかけた商品提案がみられた。バロー精肉部門はプロセスセンター(PC)からの供給を基本としているが、香里園店では牛肉のみインストア加工で提供している(豚・鶏はPC供給)。取材日は国内産黒毛和牛の「黒毛和牛ブロック(モモ肉)」(100g当たり498円)のほか、「黒毛和牛ステーキ用(ヒレ肉)」(100g当たり1843円)、「黒毛和牛徳用焼き肉用(バラ+モモ+カタ肉 切り落とし)」(100g当たり498円)などを平台で大きくアピールしていた。

取材日は国内産黒毛を平台で大きくアピールしていた
取材日は国内産黒毛を平台で大きくアピールしていた

 「インストア加工は顧客のニーズに合わせて牛肉を臨機応変に加工できるのが大きな強みだ。たとえばPCからの供給では販売が難しい7000円台や1万円台のブロック肉といった商品を仕立てることができる」(鈴木店長)。精肉を強みとするロピアが至近にあるものの、精肉部門の売上はきわめて好調で、とくに牛肉は全店でトップクラスだという。

 バローは25年5月、「スーパーマーケットバロー」関東1号店の出店を表明しており、香里園店はその実験店舗としての役割も担っている。鈴木店長は「(香里園店を)関東でも通用する“圧倒的勝ちパターン”をつくる礎としたい」と意気込む。

記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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