ローソン、富士通の生体認証を導入したレジなし店舗の実験を開始
専用アプリや手のひらで入場可能
レジレス店の利用には事前に専用のスマートフォンアプリ「Lawson Go(ローソン・ゴー)」のダウンロードが必要だ。アプリ内で「Apple ID」「Googleアカウント」「LINEアカウント」のいずれかのIDと決済に使用するクレジットカードを登録する。店舗に入る際は、アプリに表示されるQRコードを入口の読み取り機にかざすことで入店できる。その後店内で購入したい商品を選び、そのまま出口から退店すると登録したクレジットカードから自動で決済されるという仕組みだ。レシートは退店後2分ほどでアプリに表示される。
また、3月16日からはQRコードに加え、富士通の「マルチ生体認証技術」により手のひらをかざすだけでも入店できるようになる。同技術は富士通が独自に開発したもので、顔認証と手のひらの静脈認証を組み合わせた認証システムだ。静脈は体内にあるため、情報漏洩の可能性が低く安全性が高いというメリットがある。手のひら認証を使用するためには、別途社内に設置予定のブースでの登録が必要だ。
このシステムではスマートフォンを持つ必要もないため、完全に“手ぶら”で入店し、買物を済ませることができる。「たとえば社内の打ち合わせ後、何も持っていない状態でもデスクに戻る前に購入できる。このような潜在需要があるかどうかも検証したい」(ローソン理事執行役員 オープン・イノベーションセンター長の牧野国嗣氏)。
レジレス店の実験にあたり、棚には商品の重量を検知するセンサーを導入したほか、天井には28台のカメラを設置した。このうち11台はお客の導線を追跡し、もう11台は商品の種類や動きを識別する。残りの6台はお客の手の動きを認識するためのものだ。
20年夏には一般公開へ
今回の実験の目的は大きく2つある。1つは顧客体験の向上だ。QRコードもしくは手のひらをかざすだけで入店可能なうえ、レジに並ばずに決済できるためストレスなく買物することができる。ローソンはレジレス店を利用したお客へアンケートを実施し、今後の機能改善に生かす考えだ。
もう1つは業務効率化・機会ロスの削減だ。レジ業務をせずに済むことで人件費の削減やほかの業務のための時間確保につながる。加えて、ピーク時にレジの待ち時間が長くなることによる機会ロスを減らす効果もある。
とはいえ、システム上の課題はいくつかある。多くの人数が連続で入店した場合、レシートがアプリに届くまでに時間がかかる。また、たとえばコーンチョコとブロックチョコなどパッケージが類似した商品を同時にとり、片方を棚に戻した場合などは完全に見分けることができるわけではないようだ。そのほか、商品が軽すぎる場合は棚のセンサーで検知できないこともあるという。
ローソンは今回の実証実験を基に、20年夏をめどにレジレスの一般向け店舗を都内に出店する予定だ。しかしそれ以降の出店は未定としており、前述したようなシステム上の課題もあるため、同社はレジレス店舗の急速な拡大はしないとみられる。米国のAmazon Go(アマゾン・ゴー)のようなウォークスルー型の小売店舗が日本に普及するには、まだまだ時間がかかりそうだ。