前回の記事では、首都圏随一の集客力を誇る「スーパー三和ラゾーナ川崎店」の売場をレポートした。第2回目となる今回は食品スーパー最大手、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)の繁盛店「セントラルスクエア押上駅前店」の売場からその強さの秘密を探っていこう。(本文中の価格はすべて本体価格)
ライフは大阪と東京にそれぞれ本社を持つ、“二頭立て”の食品スーパー企業である。
同社が大阪府豊中市に1号店を出店したのは1961年11月のことだ。その10年後、71年10月には首都圏1号店となる「板橋店」を出店。2019年5月末時点で、近畿圏に155店、首都圏に118店を展開する。店舗数・売上高とも“西高東低”ではあるものの、ここ3年間では首都圏の売上シェアが伸びており、1店舗当たり売上高も首都圏の方が高い。なお、19年2月期の既存店売上高対前期比は首都圏1.5%増、近畿圏1.1%増だった。
さて、ライフは2013年11月に、新フォーマット「セントラルスクエア」の1号店として、JR新大阪駅に近い淀川区に「セントラルスクエア西宮原店」(大阪府大阪市)を開業している。そこから約2年間の準備期間を経た15年12月、セントラルスクエア首都圏1号店である「セントラルスクエア押上駅前店」(東京都墨田区:以下、押上駅前店)を出店した。
オープンから3年余り経過した現在も、押上駅前店は開店当時のスタイルを維持しており、ライフの首都圏戦略を体現する旗艦店として存在感を放っている。ライフの岩崎社長はある新店の会見の際に、「(押上駅前店の)年商は52億円ほどまで上がってきている」と発言しており、同店が首都圏を代表する繁盛店であるのは間違いない。
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お客を呼び込む総菜売場!
交通の要所「押上」駅から目と鼻の先の好立地!
首都圏ナンバーワン店舗との呼び声高い押上駅前店では、どのような店づくりをしているのか。立地から見ていこう。
押上駅前店は、都営浅草線・東京メトロ半蔵門線・京成押上線・東武伊勢崎線など複数の路線が乗り入れる交通の要所、「押上」駅の目と鼻の先の場所にある。周辺は下町風情を感じさせる住宅密集地だが、12年5月に「とうきょうスカイツリー」駅ができて以降は開発が進み、高層マンションが次々と建ちはじめるなど、環境は大きく変化しつつある。
ちなみに、押上駅前店が入居する建物は京成電鉄の旧本社ビルであり、同店のほかにはホームファシニングの「ニトリ」が入居。上層階はホテルとなっている。
建物は地上1階、地下1階の2フロア構造。1階部分から見ていくと、総菜、インストアベーカリー、酒類、医薬品の売場が広がり、イートインを設けたカフェコーナー「ライフカフェ」も設けている。
インストアベーカリーの「小麦の郷」は、店の看板部門であり、焼きたて食パン専門店の一本堂監修「食パン」、フランス産小麦100%使用の「クラッシックバケット」のほか、ピザやサンドイッチなども豊富に揃える。ベーカリー売場のそばには、バイキング方式の「おかずコーナー」を設置しており、米飯では「ビーフカレー」(398円)、スープの「コーンクリームスープ」(128円)のほか、「春巻」「豚キムチ」といったバイキング総菜10SKUも品揃えする。
壁面約75尺のスペースには、「弁当」「焼鳥」「飲茶」「天ぷら」「フライ」「串揚げ」「グリル」「焼魚」「サラダ」をコーナー展開している。弁当コーナーでは、「厚切りロースカツ弁当」をはじめとした売れ筋を固定で並べながら、「大海老と真穴子の天重」(698円)、「中華弁当」(490円)など日替わりのメニューも用意する。店内加工とセンター納品をバランスよく取り入れている印象だ。
フライでは「ハーブ三元豚のロースカツ」(398円)、「甘酢ソースのメンチカツ」(150円)など販売。飲茶では、「焼売」「餃子」「春巻」など自家製の商品を充実させている。サラダはセンター商品が中心で、「サラダオードブル」(980円)など幅広い量目・アイテム数でラインアップする。
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ライフ独自のスタイルとは
難易度高い2フロア構造の売場づくり、ライフはなぜ強い?
1階売場のほぼ中央では、約40尺の「チーズハウス」コーナーを設けている。専任担当者を配置してチーズ量り売りを実施するほか、米国直輸入の無添加・砂糖不使用の「ピーナツバター」「アーモンドバター」といった一風変わった商品も揃える。同店独自のスタイルを確立している印象を受けた。
サービスカウンター横には「ジュースバー」があり、オレンジジュースなど7SKUを200円、または300円で販売する。同コーナーは、押上駅前店が首都圏初導入であり、その後、新店を中心にほかの店舗でも導入が進んでいる。こうした新しい商品政策のチャレンジの場としての側面も持っていると見られる。
そのほか、総菜・ベーカリーからなる即食ゾーンに隣接する格好で、約70席のイートインを設けた「ライフカフェ」も同店の大きな特徴のひとつ。同コーナーでは、コーヒーだけでなく、ピザ、パスタなどの食事メニューもオーダーでき、出来たての商品を提供する。利用客は幅広く、調査期間は常時混雑していた。
レジ前の酒類売場は約50坪のスペースで展開する。取り扱いSKU数は約1500と見られ、日本酒は全国の銘酒を取り揃えると同時にプライベートブランドの「純米大吟醸」もラインアップする。
焼酎でも「森伊蔵」「佐藤」といったプレミアム焼酎を揃えており、ワインは自社直輸入品をメーンに、「成城石井」「オーガニックワイン」「プレミアムワイン」などをセラーで展開。ビール系飲料、缶チューハイ、日本酒、焼酎、梅酒、割材などは、自社開発商品に加えヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)との共同開発商品も扱う。
メーン入口から見て左端は約90坪のドラッグストアゾーンが広がる。免税専用カウンターが設置されており、医薬品・化粧品を求めるインバウンドへの対応も万全だ。包丁やフライパンといった日用品も揃えているのも魅力となっている。
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食品売場が2層構造の食品スーパーは、レジ対応や機能性といった観点から売場づくりが難しい。だが押上駅前店は、総菜、ベーカリー、イートインの連携が巧みであることに加え、酒類、飲料、ドラッグストアゾーンの組み合わせもよく機能しており、お客にも受け入れられているようだ。これは、総菜やベーカリーのおいしさがお客に認知されたことが大きいと思われる。筆者の耳にも同業者からの高い評価が聞こえてくる。(後編に続く)