小売業のデジタルトランスフォーメーション
進化する顧客起点のデータ分析・活用戦略の最前線
加速する流通業のデータ活用の成功事例
「IoT時代のマーチャンダイジングイノベーション」
~小売業界の収益最大化を図った需要予測に必要な要件とは?~
SAS Institute Japan株式会社
ソリューション統括本部 インダストリーソリューション統括部
マネージャー
井上 義成 氏
流通業界にとって需要予測や在庫の最適化は、売上拡大と経営効率化に向けて非常に重要なテーマである。ビッグデータの活用と言われるようになった昨今、従来の「勘と経験」に頼る予測や分析から「データを重視」する傾向がより強まり、データ活用の効果の最大化や効率化にはツールの選定が重要なウェートを占めている。
「顧客理解」中心のソリューションコンセプト
SASがフォーカスしているのは、アナリティクスを「業務とどのように連携させていくことで、収益向上や顧客の獲得につなげていけるか」ということである。
「SAS for Retail」のコンセプトは「顧客理解」を中心に置いており、顧客の様々な情報を分析することで、ライフスタイルやライフステージなどに合わせた需要を把握し、流通業の意思決定を支援するアナリティクスを提供している。
顧客理解というとCRMを想定しがちだが、マーチャンダイジング、サプライチェーン、ストアオペレーション、デジタルコマース、リスク/サイバーセキュリティ、エグゼクティブインサイト、マーケティングなど様々な業務で顧客理解を踏まえた意思決定を支援する仕組みを備えているのが特徴である。
マーチャンダイジングは、店舗のローカリゼーションや顧客ニーズに応じたプライスラインの設定などに活用。サプライチェーンは、マーチャンダイジングやマーケティングと連動した需要予測や在庫計画などを支援。ストアオペレーションの領域は、IoTによりレジ待ちの解消や接客の高度化を実現。デジタルコマースは、顧客体験のパーソナライズやレコメンドの最適化を図る。リスク/サイバーセキュリティは、SASが金融業界向けに培ってきた高度な機能を提供。エグゼクティブインサイトは、従来からの集計管理に予測やシミュレーションの技術を活用したインサイトを提供。マーケティングの領域は、カスタマージャーニーと連動したマーケティング計画・実行や他業務との連携を図るソリューションである。
現在、54カ国で900社以上の流通企業が、SASのソリューションを活用して成果を上げている。
様々な機能をシングルプラットフォーム上で提供
「SAS for Retail」が構成する機能は、顧客の行動に関するデータや小売りの様々な業務を統合して分析できるデータマネジメント、要因分析などを行うデータ探索の機能、売上や来店を時系列で予測する機能、店舗のクラスタリングや顧客セグメントを行うモデリング機能、構築されたモデルを更新して高精度に業務に適用するモデル管理、分析の結果から最適な在庫量などを導き出す最適化エンジン、様々な最適化からビジネスルールや契約条件などと紐付けて業務に反映する意思決定支援の機能、顧客連携などの運用管理の機能、分析の結果を従業員に素早く伝えるレポーティング機能、発注システムなど業務系システムと連携するための機能などを網羅している。
これらの機能は、すべてシングルプラットフォーム上で動かせるのが最大の特徴であり、必要な機能をピックアップしてコンポーネントとして組み合わせていくことができる。つまり、スモールスタートで確認しながらスケールアップしていくことができる。
SAS DDPOで需要予測に関わる問題を解決
需要予測がうまく活用されない理由として、①予測精度の問題、②人/運用の問題、③MDとの適合性、④SCMとの適合性、といった問題があると考え、それぞれに解決の機能を備えている。①の問題は、様々な商品カテゴリや需要パターンに対応した予測手法を取り入れ、需要変動を検知してモデルを再構築、及び自動更新。②ツールによる自動化と高速化、予測ロジックや分析プロセスを可視化、人材育成や外部人材の活用。SASでは経験豊富な人材を擁して支援する体制も構築。③MD実績データの収集・統合、MD効果を予測モデルへ適用。④複数の制約条件に基づいた最適化ロジックの構築や“What-ifシミュレーション”機能を活用。
これらの機能を備えたものが「SAS for Demand-Driven Planning and Optimization(DDPO)」で、DDPOは需要予測をベースとしたMD/SCM全体最適化ソリューションである。
DDPOを構成する製品としてデータ統合やレポーティング、実績管理を行う「SAS Demand Signal Repository(SAS DI Server/SAS Reporting)があり、これをベースにSKU別の需要予測や店舗別客数予測など自動的に行う「SAS Forecast Analyst Workbench」および「SAS Enterprise Miner」、階層間の全体在庫最適化や推奨発注数算出などを行う「SAS Inventory Optimization Workbench」がある。
AIと融合したプロセスで市場の変化にも対応
DDPOを導入しAIと融合した在庫最適化を実現するためのプロセスは、まず需要予測、人による意思入れ、そして在庫最適化という流れになる。需要予測では売上データだけでなく様々なデータを取り込んで有効なデータだけを自動反映。また高度な統計知識がなくても自動的に需要予測モデルを作ることが可能で、拠点階層・商品階層を考慮したワンナンバーの需要予測が行える。
意思入れのプロセスでは、セールやプロモーションによる需要変化を予想する“What-ifシナリオ分析”や需要予測値に対して経験による意思を入れ込むことも可能とした。在庫最適化の段階では、“What-ifシナリオ分析”による欠品率と在庫コストの調整と最適化、そのための推奨発注数を自動作成する。
こうした機能を、店舗クラスタリングから品揃え最適化、在庫最適化、価格最適化といったプロセスで活用している事例もある。データソースはPOSの販売情報や顧客情報、ECサイトアクセス、天候情報なども含めて数多くのデータが存在し、それをDDPOで取り込んでデータ統合、モデリング、時系列予測、在庫最適化などに反映する。例えば、そこから店舗計画や輸送・在庫のコントロール、売場計画や販促計画などマーチャンダイジング全般を網羅した計画策定などで流通業界の業務最適化につなげる。
【特別レポートのご案内】
■ 新製品の需要予測のためのステップ別ガイド
新製品の投入に関する正確な需要予測は、履歴データが足りないことから「従来の時系列手法では信頼に足る予測結果が得られない」という課題がある。SASではデータマイニング、セグメンテーションとクラスタリング、統計予測、特定領域の専門知識、非構造化データの活用による最新のイノベーションによって、新製品の需要予測を最適な意思決定で可能にしたソリューションを提供している。
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