IoT・AI時代のデジタルイノベーション
データから洞察と価値を生み出す小売業のアナリティクス経営
ビッグデータ活用を企業競争力向上につなげるために
需要予測をベースとした戦略的マーチャンダイジングの実現
~ Demand-Driven Merchandising ~
SAS Institute Japan株式会社 近藤 誠司氏
すべての基本は高精度な需要予測から
世界大手でDDPOの導入が拡大
発注や適正在庫など、これまで当たり前に属人的な「経験とカン」に頼ってきた。しかし市場競争の激化や人手不足、取扱商品点数の増加など従来通りの方法ではすでに限界に達していると考える流通企業は多い。適正なタイミングでの発注やチャンスロスを起こさず過剰在庫にもならない適正な在庫をシステムでカバーするために重要になるのが、高精度な需要予測である。SASのソリューション「Demand- Driven Planning and Optimization(DDPO)」は世界の大手企業がこぞって導入している。
既存商品に加え新商品の需要予測に対する相談が増加
日本が目指すべき社会として16年1月に「超スマート社会(Society5.0)」が第5期科学技術基本計画として提起された。この超スマート社会とは、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」とされ、人々に豊かさをもたらすことが期待されている。
このための超スマート社会を構成するサービスプラットフォームにはエネルギーバリューチェーンや高度道路交通システム、新たなモノづくりシステムなど数多くの要素があるが、それらバラバラに存在する要素を有機的につなげていくことが重要になる。
最近、製造業や流通小売りのお客様から需要予測に関する精度についての課題やこれから発売する新商品の需要予測に関する相談が数多く寄せられている。「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し…」というのは、まさにスマート社会を実現しようとする時代の要請といえる。
商品数の増大や市場競争激化にAIで対応
1店舗1万アイテムの商品を扱っていて100店舗あれば予測対象の商品数は全体で100万アイテムとなる。本来は店舗毎X商品毎に100万個の需要予測モデルを適用するべきであるが、人手での対応では限界があることから妥協して1つのモデルで複数の店舗/商品の予測を作成している現場もある。また本部や店舗などそれぞれの部門担当者が異なる予測値をそれぞれ作成しており組織としての予測値が複数存在するケースもある。そうした問題に対して曜日、天候やイベント等の外的要因を考慮した商品毎×商品毎の粒度の細かい高精度の需要予測モデル、本部担当/エリア担当/店舗担当など各階層間の補正も含めたワンナンバーの需要予測、新製品需要予測を含んだ精度の高い予測をクイックに展開できるシステムが必要となる。
需要予測から在庫最適化までカバーするDDPO
SASはこうしたニーズに対して「Demand -Driven Planning and Optimization(DDPO)」というソリューションを提供している。これは需給計画業務に必要なすべての機能すなわち「既存商品/新商品の需要予測」、「関係部署でコンセンサスをとりながらの需要予測に対するビジネス面での意思入れ」、「在庫最適化のための補充計画作成」を単一プラットフォーム上で提供する統合基盤である。
需要予測だけが注目されることがあるが需要予測はそれだけでは業務改善には繋がらないため需要予測の結果をいかに業務に反映するか、需要予測結果を元にどのように在庫最適化を実現するかが重要となる。DDPOは需要予測結果に加えて、目標とするサービス率、調達リードタイム等の発注に関するさまざまな制約条件を踏まえたうえで、発注点(在庫がいくつ以下になったら発注するか)、補充点(在庫がいくつになるように発注するか)、安全在庫数などの発注基準を拠点(配送センターや店舗)X商品毎に最適化し、日別の発注数量の推奨値を作成する。