ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015
顧客ロイヤルティを創造するアナリティクス経営
進化する小売業のID-POS、顧客データ分析・活用戦略
SAS Institute Japan ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 原島 淳 氏
売上向上のためのID-POS分析
~データ分析による実現価値の最大化をサポートするSASソリューション
ID-POSをはじめとする顧客分析を起点に、業務改善を進める企業が増えている。しかし、得られた顧客洞察から、商品、店舗、マーケティングといった小売業のバリューチェーン全体を横串で最適化できている企業はまだ少ない。SASの分析ソリューションでは、顧客に関するデータを一元管理し、得られた洞察を全社レベルで共有し、各部門の意思決定、バリューチェーンの最適化をサポートする。また、今日のオムニチャネル環境下における複数顧客接点のアクションの全体最適を実現し、マーケティングのROIの最大化をサポートする。
ソリューションコンサルティング本部
マネージャー
原島 淳 氏
競争の激化や顧客への主導権シフトといった背景から、ID-POSなどのデータ分析と顧客理解の重要性が増してきている。
分析の目的は、顧客理解を起点に、顧客への付加価値を最大化することである。この基本形は、1990年代に英TESCOが実現したものだ。TESCOは、顧客の嗜好・価値観の理解に基づいて、顧客に合った商品を開発し、店舗の品揃えを客層に応じて最適化し、顧客に合った販促・クーポンを実行することで既存顧客の売上を伸ばした。今日では、分析内容はより進化しているが、顧客理解を起点に、バリューチェーンを横串で最適化し、付加価値を高めるという考え方が重要であることに変わりはない。
昨今、多くの企業が顧客データ分析に取り組んでいる。しかし、得られた顧客洞察を活かし、バリューチェーン全体の最適化という本来の効果を実現している企業はまだ少ない。
せっかく顧客の嗜好や価値観が理解できても、クーポンのパーソナライズだけ、というように、一部でしか顧客洞察を活用できていないケースがある。あるいは、部門別に個別に分析を行っていて、全社的に一貫性のない洞察を起点に、商品政策から販促までの個々の施策が企画されているというケースも多い。オムニチャネル・マーケティングといいながら、店舗のクーポンとアプリのレコメンドが、個別の顧客データとマーケティング・プログラムを起点に動いているケースもある。
つまり、データベースや分析を部門横断で統合し、一貫性ある顧客洞察を全社レベルで共有し、一貫性ある業務の最適化を推進できるようにしていくことが課題である。
データと分析の統合は、オムニチャネル・マーケティングの前提でもある。さらに部門横断のアクションを一元管理することで、効果的なオムニチャネル・マーケティングが実現できる。
ある海外ドラッグストアでは、店頭クーポン、EC、メール、アプリ、DMなどの複数チャネル横断で展開される無数のプロモーションを、顧客個人単位で最適化する。どの個人に、どの部門/商品を、どんな値引き条件で、どのチャネルから訴求すると最大の利益が得られるかを予測し、個人毎に最適なプロモーション内容を判断。この事例のポイントは、部門横断/チャネル横断で、プロモーションの全体最適を実現していることだ。従来の部門別/チャネル別のプロモーション管理と比べて、マーケティングROIは2倍以上となっている。
次は、ある海外百貨店の事例。オムニチャネルのカスタマージャーニーの中で、顧客のコンテキストに合った最適なマーケティングを実現している。たとえば、ある顧客が婦人服売場でワンピースを購入したとする。次に、顧客が子供服売場に行くと、モバイルで位置情報を検知し、子供服のオファーがモバイルに届く。この際、婦人服の買上金額などをインプットに、子供服の最適なインセンティブ条件が予測される。店舗とモバイル横断で、一貫した顧客理解を起点に、シームレスな顧客体験を実現しているのである。
繰り返しになるが、これらの事例のように、顧客起点でオムニチャネル・マーケティングを最適化するためには、データと分析の一元管理、さらにオムニチャネル横断のあらゆるアクションを一元管理する仕組みが必要である。
こういった背景から、SASの小売業向け分析ソリューションは、三つの一元管理をコンセプトとして提供している(図表1)。
一点目は、データの一元管理である。顧客、商品、店舗、オンライン、販促などに関する様々なデータがあるが、これらを統合して保持する。これにより、顧客分析、商品分析、店舗分析、販促効果分析など様々な分析が可能になる。一貫性あるデータから、すべての意思決定者に一貫した情報を提供するものである。 二点目は、分析の一元管理である。具体的には、顧客の関心、ニーズ、収益性に関する情報や、商品の売上特性、店舗の顧客特性などの洞察を部門横断で共有し、企業内のあらゆる意思決定者が情報を自由に利用できるようにする。
図表2は、商品部向けのレポートのイメージだ。ユーザーは、担当する商品の中からカットすべき商品を見つけるために、様々な情報を自由に探索できる。単に、売上やトレンドを見るだけでなく、カットしようとしている商品には代替となる商品があるかどうか、優良顧客のお気に入りになっているかどうかなど、商品カット判断に求められるあらゆる情報にアクセスできる。従来のレポートツールのような固定的な視点だけではない。データと分析が一元管理されている中から、ユーザーは、見たいと思う情報に自由自在にアクセス可能となる。
三点目は、アクションの一元管理である。包括的なデータと分析結果をインプットとして、オムニチャネル横断で展開される無数のマーケティングアクションの全体最適を実現し、ROIを最大化する。もちろん、複数チャネル横断でアクションの整合性と一貫性、そして個人へのコミュニケーションの頻度も管理することができる。
SASの優位性は、企業のあらゆる意思決定、あらゆるアクションを、一貫した顧客理解を軸にサポートできることである。データ統合から、あらゆる分析、活用までをワンストップで実現できるため、様々な製品を組合せて実現する場合と比較して、IT投資を抑えることができる。また、運用も容易である。
一方で、商品分析、店舗分析、販促分析などテーマを絞ってスモールスタートすることも可能である。目的を絞って、分析の第一歩を始めようとしている企業にも推奨できるソリューションである。