「串カツ田中」がとんかつの新業態「厚とん」で打つ次の一手
味とサービスへのこだわり
肉の調達においては、知名度やブランド名にとらわれるのではなく、「肉本来のうまみや柔らかさ」を重視している。庄内豚のロース肉や琉香豚(りゅうかとん)のヒレ肉などのラインナップを揃える。
また、多様な食の好みに応えるため、国産鶏肉を使った「チキンカツ」の提供も開始している。織田氏は「もも肉とささみ肉を使用しており、限界まで柔らかく仕上げた」と説明する。

五反田店のこだわりは、肉の選定にとどまらない。調理工程や接客の細部にまで配慮がなされている。たとえば、胃もたれしにくい特製ブレンド油を用い、低温でじっくり火を入れた後に高温で仕上げる二段階調理を採用。さらに、余熱を生かして芯まで火を通す技術など、揚げ方にも工夫を凝らしている。
また、付け合わせや調味料にも独自の工夫がある。たとえば、さっぱりとしたゆず大根、高知県室戸の塩、自社開発のにんにく醤油などが卓上で提供される。さらに、「〆(しめ)のカツ丼」としてパクチーと卵(温玉)を組み合わせたアレンジメニューもあり、ボリュームのあるとんかつを最後まで飽きずに楽しめるようにしている。

接客面では、低温調理のために料理の提供にやや時間がかかることを、あらかじめ丁寧に案内している。さらに、店内で炊き上げる新潟県産の厳選米については、ちょうど炊き上がったタイミングに来店したお客へ、羽釜からすくった炊き立ての上澄み部分を一口分とり、特別に提供する工夫もしている。こうした細やかな心配りが、食事の満足度を高めている。

織田氏は「食後にどんな気持ちで帰っていただけるかを常に意識している。これまで培ってきた接客姿勢や顧客満足を大切にする姿勢を、新業態でもしっかり発揮していきたい」と話す。
今後は海外進出を見据える
開業直後のピークを経て、オープンから約4カ月が経過した現在も売上は右肩上がりに推移しており、織田氏は「手応えを感じている」と語る。
一方で、さらなる成長に向けては、安定的に利益を確保できる体制づくりや、持続的に店舗を運営できる仕組みづくりが必要だと織田氏は認識している。つまり、現在の好調を一時的なブームで終わらせず、将来にわたって売上を積み重ねていくための取り組みが重要になるという。また、顧客からのメニューのバリエーション拡充への要望や、現在の価格設定が幅広い層に受け入れられるかどうかの検証も、今後の成長に向けた重要なポイントだ。
こうした課題に対応する一環として、五反田店では、最小限のスタッフでも運営できる効率的なオペレーション体制を導入しており、これを将来の多店舗展開に向けたモデルとして磨き上げている。まずは直営店舗でノウハウを蓄積し、次のステップとして、浅草や銀座といったインバウンド需要の高いエリアや、ビジネス街、埼玉・神奈川などの周辺都市圏へのフランチャイズ展開も視野に入れる。
また、国内にとどまらず、海外市場も見据えている。織田氏は「人口減少により国内市場が縮小傾向にある一方で、世界的に日本食への評価が高まっている。海外市場には大きな可能性があると考えており、『厚とん』はとんかつで世界に挑戦するための第一歩だと位置づけている。さらに、われわれが展開しているすき焼きや天ぷらといった業態も含め、日本の食文化で“世界の胃袋”を掴んでいきたい」と抱負を語った。






注目急成長企業も多数ランクイン!日本の小売業1000社ランキング151~1000位を全公開



