フードロス131トン削減!未利用魚の冷凍サブスク「フィシュル!」の“意外”な狙いと戦略

吉牟田 祐司
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ターゲットは30代半ば〜40代前半、
50代半ば〜60代半ばの女性

40種類以上のからランダムに組み合わせた「おまかせ便」が月に一度届けられる。プランは6、10、16パックの3プランあり、生食用や加熱用などバリエーション豊富な点も魅力となっている

 新型コロナウイルスの流行で非常事態宣言が発出され、日本中の飲食店舗が営業自粛に追い込まれた。その影響で「われわれとしても、新しいビジネスを始めざるを得ない状況になりました」と井口社長。そこで思いついたのが、後に「フィシュル!」に発展するサービスだった。

「家庭でおいしい魚を簡単に味わえるようにすれば、魚の需要を生み出せる。未利用魚の有効活用もできる。これはいい!そう思ったのです」(井口社長)

 クラウドファンディングで未利用魚を活用したミールパックを届けるプロジェクトを立ち上げて、資金を調達するとともに、どのような層に受け入れられるかリサーチを重ねた。結果的に404人の支援者による396万4562円の支援が集まって目標を達成。それが「フィシュル!」の土台となった。

 そして2021年3月、「フィシュル!」をローンチ。狙ったのは30代半ばから40代前半の単身または子育て中の女性、そして子育てがひと段落して時間と金銭面にゆとりがある50代半ばから60代半ばの女性だったという。SNS広告やリスティング広告を掲出するデジタルマーケティングとともに、自分たちでInstagram、Twitter(現・X)のアカウントを開設。積極的に情報を発信してオーガニック流入も狙った。

和風・洋風・中華風などの様々な味付けをラインナップ。消費者の好みにあわせて提供しているアレンジレシピも好評だという

「煮切り醤油漬け」「ハーブオイルマリネ」「ピリ辛ごま坦々」など和洋中の味わいを取りそろえたミールパックは、解凍するだけ、温めるだけで食べられる。味のバリエーションは40種類以上。井口社長によると「総数で50種類は超えていますが、アンケートを実施して評判の良いものを残しています」と話す。

「お客様に商品を直接お届けし、声を吸い上げやすい関係性が築けている。意見や要望を商品開発にしっかり反映させて、お客様と一緒により良い商品を作っていくのがわれわれのスタンスです」(井口社長)

約120種の国産天然魚×味付けの組み合わせでSKUは約6000

フィシュルに使われる未利用魚
フィシュルに使われる未利用魚

 魚の種類は約120種、すべて国内で水揚げされた天然物だ。例えば未利用魚の代表格ともいわれるアイゴは白身でクセのない味わい。ただし、海草を食べるために時間が経つと内蔵から独特の臭みを発する。新鮮なうちに処理してしまえば、おいしく食べられるが、背びれと腹びれに毒バリが付いていて、刺さると指が腫れてしまうという厄介さもある。

 イラ、マトウダイ、ニザダイ、ミノカサゴといった魚は、見た目が悪い、加工しづらいといった理由で未利用魚として扱われている。タカノハダイ、ミシマオコゼ、オジサンといった魚は、そもそもの水揚げ量が少ない。それで未利用魚となっている。

 未利用魚の加工・調理について、ベンナーズでは試行錯誤して独自のノウハウを編み出してきた。社員約50人のうち、製造に携わるのはおよそ30人。冷凍方法もさまざま技術を試して、マイナス30度で瞬間凍結させるアルコール冷凍がベストだという結論に至ったという。

 魚は加工の過程で骨がほぼ完全に取り除かれ、保存料などの添加物を使用しない。「生食できる状態のものしかお届けしておらず、品質には絶対の自信を持っています」と井口社長。

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